ICTの全方面活用で加速する「神奈川モデル」 新型コロナ対策で際立つ

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新型コロナウイルスの感染拡大局面で、3月下旬に「神奈川モデル」を発表し、拡大フェーズや患者の重症度に応じた医療機関、資源の配分を定めた神奈川県の取り組みがが全国のなかでも際立っている。これまで無症状・軽症患者のための宿泊施設の確保等では東京都に次ぐ病床を確保したほか、精神疾患や小児患者向けの専門病棟の確保、さらに独自の検査専門施設も積極的に増やした。県民920万余を支える巨大自治体・神奈川県のこうした機敏な動きの背景には、前例のないレベルで全面投入されたICTの働きがあった。

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必要に迫られた緊急事態、適したICTツールを急遽実戦投入
期せずして神奈川が「大規模ICT実践フィールド」に

感染者の急増に対応するため、神奈川県は3月下旬、中等症患者を集中的に治療する拠点病院の整備、軽症・無症状患者を自宅待機か、専用の施設に収容することを柱とする「神奈川モデル」の構築を進めると発表した。この計画に基づき、県は横浜市内のホテルなど2カ所を収容施設として指定しすでに2400床を確保したほか、横浜市内では中等症専用施設、藤沢市内では臨時の医療施設を建設中で、こちらもまもなく稼働を開始する。

現場のリアルニーズが呼び水に

Corona Monitoring Board Kanagawa

早くからこうした具体的な措置を矢継ぎ早に打てたのは、やはり2月上旬から横浜港に寄港した「ダイヤモンド・プリセンス号」の対処に、地元自治体としてあたった知見があったからだ。神奈川県は国とともに、DMATが患者移送と収容を担当。川崎市立川崎病院、聖マリアンナ医科大学病院などでは、収容先を調整する県の調整本部から要請を受け、重症患者を中心に収容、治療にあたった。

その際にまず課題になったのは、刻々と変わる状況を関係者全員がいかに迅速に把握するかだった。3700人余もの人数が順次毎日PCR検査を受け、患者が発生次第搬送先を調整、治療に入る。この一連のステップは休みなく続き、しかも当然、これらすべてのステップで感染防護対策を徹底する必要がある。ほぼすべての関係者が役割を果たすため持ち場を動き回る中で、万全な情報共有を担保するにはICTツールの活用が不可欠だった。

そのために採用されたのは、サイボウズの「kintone」だった。kintoneは、そのシステムに登録したデータはもちろん、外部データも取り込んで素早く共有可能で、かつそれらのデータを一定の書式に整備しなおし外部サービスに書き出すこともできる。そのための多くのテンプレートや「アプリ」と呼ばれるプリセット機能が準備してあり、導入やセットアップも比較的容易で、さらに、使用にはどの端末にも必ずあるブラウザがあればよく、あらためて専用のアプリケーションを入れる必要がなかった。これは感染症への素早い対処が求められつつも、46,000人を越える職員を抱える巨大自治体にとっては非常に重要な要素だった。

これらの理由から、神奈川県新型コロナウイルス感染症対策本部は、kintoneを情報集約、情報共有、モニタリング基盤(Corona Monitoring Board Kanagawa)として活用することにした。医療機関の稼働状況、医療機器や医療資材の状況、帰国者・接触者相談センター対応状況、感染患者数・PCR検査数などを、直接の指揮系統がない消防や警察まで、すべての関係部署が必要があれば接続・閲覧できるオープンなプラットフォームとして、現在も順調に機能している。

神奈川県 新型コロナウイルス対策サイトhttps://www.pref.kanagawa.jp/osirase/1369/

そしてこの基盤で収集されている情報のうち、公開可能なものは、東京都のオープンソースを活用し迅速に公開した神奈川県版「新型コロナウイルス感染症対策サイト」に随時公表されている。外出自粛や営業自粛に協力している県民に、県内の状況を正しく伝えることに貢献している。

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