ICTの全方面活用で加速する「神奈川モデル」 新型コロナ対策で際立つ

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医療者を守り、治療を支える医療現場でのコラボ

積極的なICTツールの導入は、バックエンドだけでなく医療現場でも加速した。具体的には「神奈川モデル」で設置が決定された、無症候・軽傷者向け宿泊療養施設における感染防止策、オペレーションの均てん化だ。これらの施設には、基本的には看護師が派遣され収容される療養者をモニタリングするが、非医療者も施設管理に従事するなか、特に感染防御に関する知識や必要な手順を簡便に共有するツールが求められていた。従事する全員が高いレベルで意識を共有しなければ2次、3次感染が起きてしまうからである。

これらの施設では、多くの事項を効率的に共有するため、スタディストの「Teachme Biz」が大いに役立てられている。このツールはスマートフォンやタブレットのカメラで撮影された動画に簡単な手順でテキストや注釈を追加し、動画マニュアルをすぐに作成できる特徴がある。さらに作成したそのマニュアルを担当者に対し「タスク」として送り、必ず閲覧させた上で遂行させることができる独自の工程・進捗管理の機能も持っている。患者を救い自分たちを感染から守るため、求められるタスクの「ヌケモレ」は決して許されない状況下にあって、このツールはヒューマンエラーをも防ぐICTツールならではの機能で、関係者を支えている。

さらに、感染防御の観点からは患者との接触もできるだけ回避する必要があった。施設への搬送から部屋への収容、隔離した上でのモニタリング、定期の問診まで、フローすべてにおいて細やかに設計しなければここでも感染リスクが増大してしまう。そのため各シーンで、適したICTツールが複数採用された。

まず採用されたのは、遠隔操作でズーム等が行えるSafie社のWebカメラ。任意の場所に手軽に設置でき、PCやスマートフォンから画像の確認だけでなく、カメラの向き、ズームなども行える。この機能を活用し施設入口にカメラを設置することで民間救急車の患者搬送時など受付業務を遠隔で行い、搬送時の感染リスクを低減した。

次に課題となるのは、スタッフ同士の連絡だ。患者を収容する施設内では、もちろん感染リスクに応じてゾーニングを行い、患者のいる区域では物理的な行き来も制限する。これはつまり施設で従事するスタッフ同士も自由な往来や、対面でのコミュニケーションが制限されることを意味する。また院内感染の原因として、PCやタブレット、電話を多人数で共有することによる間接的な接触が懸念されていたことから、これらの使用機会を減らしながら、即時に必要なコミュニケーションが行えるツールも必要だった。

 

この課題を解決するものとして、スマートフォンがあれば、トランシーバーのようにどこでも同時通話できるワイヤレストランシーバー「BONX Grip」が投入された。この耳掛け型トランシーバーは、すでに工場で製造ラインに従事する人たちのコミュニケーションに活用されているなど他分野で豊富な導入実績があり、すぐに現場に浸透した。

さらに、施設でモニタリングを担当する看護師やスタッフと療養者がコミュニケーションする際には、オリィ研究所の遠隔操作型の分身ロボット「OriHime」を採用。接触を避けながら、ポーズなども表現できるロボットを活用することで、隔離されている療養者の心理的ストレスにも対応することを目指した。

こうして神奈川県は、先に紹介したLINEアカウント「療養者サポート」ともあわせ、多方面でICTツールを次々と投入することで、「神奈川モデル」の柱のひとつとなった無症候・軽傷者向け宿泊療養施設における安全な診療フローを確立させたのである。

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