神奈川県は2020年3月5日、新型コロナウイルス感染症対策の一環としてLINE公式アカウントを開設した。LINEの特徴を活かし、同意のもと自身の体調を申告してもらうことで、その状況に即した個別の情報提供が可能となっている。県民を対象としたものだが、最終的には日本全体をを対象にすることを視野に入れているという。
LINE上で体調を申告、状況に合わせた情報提供
神奈川県がプライベートメッセージングサービスであるLINEの特徴を活かした新しい取り組みを開始した。5日、LINE上に専用の公式アカウントを開設し、県民を対象に新型コロナウイルス感染症に関する問い合わせ受付とフォローアップを行う。具体的には、県民が公式アカウントを友だち登録すると、情報取扱いに関する同意のあと、体調や年齢、大まかな居住地域など機微な項目を含む情報を質問にしたがって入力することで、その状態に合わせた情報提供を受けられる。
いったん情報を受け取って終わりではなく、当初症状がなくともその後体調に変化があればその旨をアプリを通じて申告することができ、その状態に応じて、場合によっては受診勧奨や保健所への連絡を求められるなど個々にあわせた情報提供とフォローアップが受けられる。LINEヘルスケアが提供する健康医療相談へのリンクも設置されている。
個々に合わせた情報提供とは別に、予防に関するきめ細やかな情報提供もこのアプリの特徴だ。マスクの外し方、手の除菌の仕方など関しては、横浜港で検疫を受けていたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」号にも支援で入った、日本環境感染学会 災害時感染制御支援チームの監修による動画が提供されている。
神奈川県を皮切りに、各自治体との協力拡大も視野
この取り組みは意欲的な公衆衛生学の研究としての性格も備えている。神奈川県の顧問である慶應義塾大学医学部 医療政策•管理学教室 教授の宮田裕章氏がプロジェクトの統括を行い、日本感染症学会の医学的監修もあわせ、入力されるデータをもとに、集団として有効な施策を迅速に検討・施行するためのデータ解析を行う。具体的には、感染リスクの高いクラスター(小規模な患者の集団)の把握と予測、対策を行った後に、実際にクラスターが解消されたかも検討することが可能になるという。
プロジェクト統括の宮田氏は、自身のSNSアカウントによる発信のなかで「本プロジェクトはシステムの負荷や、電話窓口への負荷をシミュレーションしたのちに、国や各自治体と連携を図ることで、全ての住民にサービスが提供できるシステム」とコメントしており、最終的には全国対応も可能だとしている。