研究目的に活用できる10万枚の「脳画像合成データ」のオープンソース提供へ 英国KCL
英国キングス・カレッジ・ロンドンが、パートナー企業やオープンソースのソフトウェアを活用して開発したAIモデルを用いて、脳の合成画像を10万枚生成しオープンソースとして公開すると発表した。AIを生成する教師データとなる医用画像は世界的に不足しているといわれており、こうした脳画像の合成技術が普及すれば、関連研究を大きく前進させることが期待できる。
画像はGitHubに公開予定
同大学の発表によると、同大学と関連機関、米NVIDIAは人間の脳の人工3DMRI画像を生成する深層学習モデルの構築を目的としたプロジェクト「Synthetic Brain Project」を組織しており、ディープラーニングや多くのフレームワーク、NVIDIAのハードウェアを採用し高精度な「存在しない人の」高精度な脳画像を生成できるモデルの開発に成功したという。精度を確認できるサンプルも公開されている。
医用画像を解析するAIの開発には当然ながら発症例などの画像が必要だが、必要な医用画像が収集しづらい環境にある。プライバシー保護の観点から利用できるのはMRIなどを所持する大病院がほとんどであり、かつ研究に参加する医療機関の患者集団の特性に依存してしまう。理想とする構成の母集団を形成するのは、倫理審査を通す困難さも加わってかなりハードルが高いものとなっている。
今回のプロジェクトで開発したAIモデルの利点は、様々な条件を設定して生成できる点だろう。性別、年代など条件を入れれば、条件に合った合成画像が生成できるという。プロジェクトではこの成果を受け10万枚の合成画像を生成し、オープンソースデータとしてGitHub上に公開すると発表した(現時点ではまだ公開されていない)。プロジェクトメンバーであるLondon AI Centreのホルヘ・カルドソ氏は「このモデルはMRIだけでなくCAT、PETなどにも対応可能だ」と述べており、今後生成できる医用画像の種類を拡大させ、さらに研究に貢献したいとしている。