慶應大学とアストラゼネカ、循環器・腎・代謝疾患領域で共同研究

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 2019年10月9日、慶應義塾大学とアストラゼネカは共同研究契約を締結したと発表した。循環器・腎・代謝疾患領域において、行政系医療保健データを活用した自治体向けの保健医療施策立案、提言などを目指す。

保健医療情報基盤構想「PeOPLe」を活用

 今回の共同研究は科学技術振興機構(JST)の産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム(OPERA)の事業に採択されているプログラムのひとつ(主管:慶應義塾大学殿町タウンキャンパス)。同キャンパスにも活動拠点を置く医学部医療政策・管理学教室教授の宮田裕章氏が主導する、国の行政系医療保健データ情報基盤構想「PeOPLe」※1を活用し、アストラゼネカが主力事業領域とする循環器・腎・代謝疾患領域でのリアルワールドエビデンス(RWE)※2の抽出を目指す。具体的には、介護も含めた多様なレセプト(診療報酬明細書)等の行政系医療保健データベースを正確に取得する基盤技術の開発と高度化、ならびに、疫学および疾病負担の理解や予防、医療資源配分の改善の観点からの利活用を検討する。

 今回の共同研究について、宮田氏は「日本には健康診断をはじめ、健康な段階からのデータが豊富にある。PeOPLe構想の中で様々なデータを連結することで、効果的な予防や早期治療の手がかりを得ることができるだろう。またアストラゼネカがグローバルに取り組むリアルワールドデータ活用の知見は、日本の現状と課題を把握する上でも有用であり、今後、日本と同様に超高齢社会に突入する欧州やアジア諸国に対しても、持続可能な未来社会の姿を見いだすことができればと考えている」と述べている。

 なお宮田氏はこれまでも日本、および各国の保健医療政策をデータサイエンスで支援する取り組みに関わっている。国立国際医療研究センターの研究としてタイ国民ほぼ全人口の医療ビッグデータを解析する試み(既報)のほか、沖縄県ーグラクソ・スミス・クライン(GSK)ー慶應三者の包括的連携、さらに新潟県の「健康情報管理監」として、新潟県民の医療保健データ解析を推進する「県民健康ビッグデータプロジェクト」にも取り組んでいる。

※1 PeOPLe(Person centered Open PLatform for well-being):厚生労働省の「保健医療分野における ICT 活用推進懇談会」が提唱する保健医療情報を利活用するための情報基盤の構想。宮田氏が主導し報告書に盛り込まれている(既報)。

※2 リアルワールドエビデンス(Real World Evidence):臨床現場(Real World)から得られるレセプトや電子カルテ、健診データなど、匿名化された個人単位のデータから構 成されるデータベースを利活用し導き出されたエビデンスのこと。

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