市民のレセプトデータ・健診データなどを連携 神戸市が全国初の「ヘルスケアデータ連携システム」運用開始
神⼾市は、今まで別々に記録されていた個人の医療・介護・健診等の市民のデータを個人ごとにまとめる「ヘルスケアデータ連携システム」を構築し運用を開始したと発表した。国内初めての試みで、市ではこれにより個人ごとに市民の健康状態を把握することが可能になるだけでなく、将来何らかの病気の発症予測ができる可能性もあるとしている。
市民の各レセプトデータなどを個人ごとに連結
神戸市が今回運用を始めたシステムでは、市民の健康や疾患に関する以下のデータを、個人を特定できる情報を削除したうえで連結。データセンターに格納し、学術機関が解析できるようにするという。
神戸市の「ヘルスケア連携システム」で連携対象となるデータ
①医療レセプトデータ
年齢、性別、傷病名、診療行為、医薬品、医療機器、受診医療機関、医療費、受診日数など
②介護レセプトデータ
年齢、性別、種類別介護サービス単位数、利用介護施設、要介護度、介護費など
③介護認定調査票
日常生活自立度、ADL、要介護度など
④健診データ
身長、体重、BMI、腹囲、血圧、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、GOT、GPT、γ-GT、血糖値、HbA1c、尿糖、尿蛋白、メタボリックシンドローム判定、保健指導レベル、生活習慣など
⑤予防接種の接種状況
⑥転入・転出・死亡日等一覧表
市では今回運用開始したシステムで、過去データも含め多くのデータを個人単位でまとめることで総合的に分析できるとしており、市民の健康状態や生活習慣をより正確に把握したり、将来の病気の発症予測や生活習慣病と要介護状態の関連性を解明することなどが期待できるとしている。また、解析だけでなく、疾病予防・重症化予防やフレイル予防などについて、科学的根拠に基づく様々な施策展開も可能となると見込む。
狭心症/心筋梗塞患者の治療データを解析、新型コロナの影響を検証
またこのシステムで連携運用するデータには、一定の手続きを経て、学術機関が研究⽬的でアクセスできるようにしている。市では提供データを元にした研究結果のフィードバックを受けることで、健康増進施策に活かせる知⾒を得ることもできるとしており、今回九州大学の研究グループにデータを提供。新型コロナウイルス感染症の拡大が、救急搬送の要因の多くを占める「狭心症」「心筋梗塞」になった人の治療に影響していないか調査・分析を行ってもらったという。
具体的には、九州大学大学院医学研究院医療経営管理学分野 福田治久准教授らの研究グループにデータを提供。研究グループは神戸市の医療レセプトデータを用いて、カテーテル手術の件数と心臓発作(狭心症や心筋梗塞)を、緊急と非緊急に分けた場合のそれぞれのカテーテル手術実施率の変化を、新型コロナウイルス感染症流行前(2019年)と後(2020年)の同月で比較した。
その結果、新型コロナウイルス感染症流行後には、全体のカテーテル手術件数は減っていたものの、緊急カテーテル手術の実施率に変化はなかったことが分かった。研究グループは、新型コロナウイルス感染症の流行で影響を受けたのは緊急治療の必要ない心臓発作のみで、緊急治療が必要な心臓発作は適切に治療されていたことが確かめられたとしている。
市と研究グループでは、この研究はいわゆる第3波の分析も含め今後も継続して実施し、また、新型コロナのワクチンの効果や副反応に関する研究についても実施する予定。