熊本大らの研究グループが、子宮頸がん健診の細胞診支援が可能なAI(人工知能)を開発し、研究・評価目的で利用できるサイトを公開した。国内医療機関であれば、評価回数や使用期限に制限はあるが無償で利用できる。
子宮頸がん検査時のスライド標本を対象としてAI構築
がんの早期発見・早期治療につなげるための重要な細胞診断は、細胞検査士及び細胞診専門医等の専門家が患者から採取された細胞を顕微鏡で観察し、前がん細胞やがん細胞を検出するものだが、近年、細胞検査士資格認定試験の受験者が減少傾向にあり、将来的に専門家不足が懸念されている。そのため診断精度を保証し、より質の高い診断を実現するため、細胞診断の自動化が課題となっているという。
そこで、熊本大学大学院先端科学研究部・諸岡健一教授らの研究グループは、大阪大学、京都橘大学、株式会社プロアシストと協働し、細胞診断専門家の大野英治元教授を中心とした京都橘大学が分類を行った細胞画像データベースを基に、多重焦点画像列から子宮頸がんの4種類(NILM、LSIL、HSIL、SCC)※1を識別するAIモデルの構築を行い、細胞診支援クラウドシステムを開発した。細胞識別AIモデルを用い、スライド標本全体の数万個の細胞の中で、細胞検査士がどの細胞または領域に注目すべきかを示すことができるとしており、研究で構築したデータベースのスライド標本を用いたAIによる総合評価では、がんおよび前がん症例の見逃しはゼロだったという。研究グループはこのクラウドシステムを非営利の研究・評価の用途で使用を希望する国内医療機関に対し、期間限定で無償公開している。
※1 子宮頸がん細胞診の検査結果は、ベセスダシステムという分類法で以下のように示される。
NILM(陰性)/LSIL(軽度扁平上皮内病変)/HSIL(高度扁平上皮内病変(中等度異形成・高度異形成)/SCC(扁平上皮がん)