「医療ITをドライブする」をキャッチフレーズに、医療IT分野のイノベーションの動向を伝えるメディアMed IT Techは2017年4月1日、臨床における医療関係者のコミュニケーション能力を補い、会話を臨機応変に行なえる独自開発AI「KYAI」を発表した。「KYAI」を搭載する専用のロボット「KYAIちゃん」も同時に発表、価格未定ながら予約販売の受付も開始した。
診療上の通り一遍の会話では実現できない
「本音」を言うAI
Med IT Tech の新事業開発を担当した編集主幹の河田氏は、ネーミングや開発主旨について次のように語った。「『KYAI』および『KYAIちゃん』のKYは、ご想像の通り空気読まないの略です。医師と患者のコミュニケーションにおいて、お互いを気遣いするあまり伝えなくてはならないことが伝えられていないのではと感じています。そのためには本音を言い合うのが一番いいのですが、そうそうできるものではないし、特に医師は、いろいろリスクもありより一層厳しいものです。壁を取り払うために、代わりに本音を言う存在、それがKYAIでありKYAIちゃんです」
「KYAIちゃん」は少し変わった使い方を想定している。基本的には患者が病院、診療所に持ち込むものだという。診察室内で「KYAIちゃん」を置いて会話を聞かせ、診療を受け、そのまま帰宅すると「じゃあ、本音言っちゃおうかなー」という言葉とともに起動し、診療時の会話から類推される医師の本音や患者に伝えるべきことを自律的に解釈し、喋り出すという。
例えば慢性疾患の経過観察で、生活習慣を尋ねられたときの会話から類推し、生活習慣改善の意思が見られない時は
「お前さー、もーちょっとちゃんとしろよ。
前の診察時と何も変わってねーじゃねーか。
診察しがいないわ!」
などと毒づきアジテーションしたり、逆に数値の改善が見られたときなどは、
「さっきも言ったけど、あともう少し。
いい状態が長く続いてるから、卒業まで近いかもよ」
などと勇気づける。「本音」の選択は、診察室での会話内容と、疾患の標準的な治療法、論文などを登録したデータベースを基盤に解析し、現在の患者の状態を類推。経過を良くするための話しぶりを自動で選択するという。また、診察時のコミュニケーション自体が不足しているとKYAIが判断した場合は「もう少し、どう痛いとか言って欲しいんだよね」「言ってくれないとちゃんと診断できないし、診察代払ってるんだからその分言っちゃっていいわけよ。気にするだけ損損」などと次からのより密度の濃いコミュニケーションを促す。
医師からの伝言機能、患者からの評価送付機能も搭載
主治医側の「もっとこう言っておけばよかった」といった思いを補完する伝言機能も搭載している。「KYAIちゃん」の管理側機能として、特定の患者の端末へ伝言メッセージを送付できる機能を実装している。患者が自宅へ帰り、他人に聞かれることもない環境だからこそ告げられる内容などを入れて欲しいという。「さきほどは時間がなくて言えませんでしたが、こういうことも考えられるので留意してください、といったような感じでしょうか。大病院だと時間がなくなかなか詳しくお話できないこともあると思いますので」と河田氏は語る。かなりローテクだが、メール等で伝えられるより、声で伝えることは心理的効果も違うだろうと考え、敢えて伝言というかたちで実装したという。
また患者側の、医師のコミュニケーションに対するフィードバックを促進する機能として「KYAI」ちゃんの背中に「よかった」「もうちょい」を示す2つのボタンを搭載している。患者が医師を評価することはなかなか憚られることだが、コミュニケーションに関してのことであれば、むしろ積極的にされるべきではないかと河田氏は考え、このボタンを実装した。「診察時に感じた思いに従って押すだけで、他の要素は排除しました。なお、何回押しても評価ポイントは1つだけで増えません。伝える、伝わることが大事で、それにより1対1のコミュニケーションがいい方向に変わることが大切であって、評価の多寡は重要ではないと考えます」
こだわりのアルミダイキャスト製筐体、
古くて新しい「おもちゃロボット」がモチーフ
今回の発表にあたり、いちばんこだわったのは「KYAIちゃん」の筐体だという。団塊ジュニア世代である河田氏は、幼少時代ロボットアニメにご多分に漏れず夢中になった世代。
「といっても、ちょっと上のライディーンとかグレートマジンガーなんですけどね。ウケを狙いで優しいキャラクターだったり動物をモチーフにするよりも、おもちゃ感を出した方がかえって親しんでもらえるかなと思いまして。ボタンも実装してますし」
その時代といえば、「超合金」のフレーズでアルミダイキャスト製のロボットが大々的に売り出され、大ヒットを連発していた頃だ。
「もちろん金型にもこだわってしっかり作り込んでます。可動部位も多くして、喋っている時のポーズもバリエーション豊かにしたい。遊びでキメポーズなんかも勝手にやりだすような機能もつけたいですね」
満を持して発表された「KYAIちゃん」の筐体は以下。