人工知能による原発性アルドステロン症の病型予測モデルを開発、精度89% 九州大学研究グループ

 高血圧症の要因のひとつとされ、手術により治癒が可能な「原発性アルドステロン症」を高精度に検出できる、AIによる診断モデルを九州大学の研究グループが開発した。3 つの血液検査項目の測定により検出が可能としており、国民病である高血圧症に対する効率よく適切な治療の提供につながるとしている。

229人の患者データを後ろ向き検証

 研究成果を発表したのは、九州大学大学院医学研究院の小川佳宏教授、馬越洋宜特任助教、同大学大学院医学系学府の兼 子大輝大学院生らの研究グループ。約4300 万人 の患者がいるとされる高血圧症は、高齢社会の日本においていまや国民病とも言えるが、高血圧症の多くは原因不明の「本態性高血圧」が占め、疾患コントロールも困難な場合が多い。一方で、 約10%は原因が特定できる「二次性高血圧」であり、診断ができれば治癒の可能性が期待できる。そのひとつ「原発性アルドステロン症」は、副腎に由来するアルドステロンの過剰により高血圧症を発症する病気であり、病型によっては手術により治癒を目指せる疾患だ。しかし病型診断には専門医療機関における検査が必要で早期に正しく診断される患者は多くないのが現状だという。

 そこで研究グループでは、プライマリケアの段階でより容易に診断できるモデルの確立のため、人工知能(AI)を活用。具体的には血液検査で測定できる「アルドステロン」「カリウム」「ナトリウム」の 3つのマーカーのみで、病型を予測可能か検証した。具体的には、2007年1月から2020年3月の間に九州大学病院で治療を受けた229人の患者に実施していた血液検査結果を活用。このデータを、機械学習の主なモデル手法である「ランダムフォレスト」「ロジスティック回帰」「サポートベクターマシン」「勾配ブースティング」の4つをそれぞれ単独で活用し開発したモデルで類型化と精度を検証した。

 その結果、ランダムフォレスト法により開発したモデルがもっとも有能な結果を出し、最終の検証として新たに、2017年3月から2019年12月まで札幌市立総合病院で治療を受けた患者124人のデータの類型化を試みたところ、精度89.1%(AUC)の結果が得られたという。研究グループでは、今回開発したAIにより、専門医療機関でないプライマリケアの段階において、手術で治癒可能な病型の患者の早期発見が可能となり、効率よく適切な治療の提供につなげることで、医療の質の向上が期待できるとしている。この研究成果は論文として科学誌「Scientific Reports」に2021年5月4日付で掲載された。

外部リンク(論文):Machine learning based models for prediction of subtype diagnosis of primary aldosteronism using blood test(Sceientific Reports)