東京医科歯科大学とTDKは、世界で初めて高感度磁気抵抗(MR)素子による心臓の磁場分布のリアルタイムでの測定に成功したと発表した。コンパクトで操作性・可搬性に優れた検査機器の実用化に向け、開発を継続する。
MR磁気センサによる新しい心磁計の開発へ
東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科先端技術医療応用学講座(ジョイントリサーチ講座:川端茂徳整形外科教授)、 同心臓調律制御学(平尾見三教授)とTDKは共同で、身体が発する生体磁場を測定するMRセンサの活用による、新しい心磁計の実用化に向けた研究開発を続けている。心磁計は体表面に電極を取り付けることなく、着衣のまま完全に非侵襲で測定できるのが長所だが、心磁界はきわめて微弱な生体磁場であり、計測には高感度な磁気センサが不可欠とされる。現在の既存デバイスである超伝導量子干渉素子(SQUID)磁束計は、液体ヘリウムによる超電導コイルの冷却や、磁気的ノイズを遮断する磁気シールドルームを設置する必要があり、システムが大がかりで高価であることが、普及のネックとなっている。
両者はこの心磁計普及に立ちはだかる課題を克服するため、TDKが持つ、MRセンサの研究開発を進めている。同社はSQUID磁束計の性能に迫る計測能力を持ちながらも、常温(非冷却)で使用でき、コンパクトに収蔵できるMR素子の製造技術を持っており、このMR素子を格子状に配列したセンサアレイを開発、2016年に世界で初めてこのMRセンサアレイによる心磁界分布の可視化に成功している。今回はリアルタイムでの測定で、計測に際しては金沢工業大学からの技術サポートも得て達成した。またこの過程で、心筋活動の測定に最適な2面での測定を可能とする計測装置も共同で開発したという。今後、実証試験を重ね、実用化に向けての開発を続行する。