医療法人社団KNIとNEC、AI活用で実証実験 入院患者の不穏行動の予兆を平均40分前に71%の精度で検知

 

東京都多摩地区で総合病院などを運営する医療法人社団KNIとNECは、2017年10月23日、AIを活用した医療・社会改革に向けた共創を開始すると発表した。今回、入院期間の適正化を目指す取り組みの中でNECのAI技術を活用、入院患者の不穏行動の予兆を平均40分前に71%の精度で検知できたという実証実験の結果も公表した。今後、2017年12月に開院する関連病院の新棟において、今回の実証およびAIを活用したさらなる取り組みを行うという。

バイタルデータから不穏行動の予兆検知に成功

八王子で北原国際病院などを運営しているKNIは、超高齢社会に対応するための「医療をツールとした社会改革」を提唱、その実現手段として予防や地域医療まで包括する「デジタルリビングウィル」、「トータルライフサポートサービス」、AIを活用して医療の質向上と業務効率化を目指す「デジタルホスピタル 」を実現するとしている。以前よりNECをパートナーとしてAIを医療分野に活用するための共創活動を行っており、今回の取り組みもその一環。

今回の実証では、まず両者で医療現場の改善箇所を検討・抽出し、経営上影響がある入院期間の適正化を目的とした。退院を遅らせる要因を過去の電子カルテデータから分析した結果、入院患者の約34%に不穏行動が確認された。この患者層は退院が通常の患者よりも約19日遅延しており、スタッフの業務負荷を増大させる要因にもなっていた。

そこで、入院患者の不穏行動の予兆検知と退院先の予測に、NECのAI技術群「NEC the WISE」を活用。患者が着用した時計型のセンサーから、バイタルデータ(体温、心拍など)を取得し、これらのデータからAIを活用して特徴を抽出、不穏行動につながる予兆を検知することに取り組んだ。結果、人ごとに異なる不穏行動の特徴を抽出することができ、患者の不穏予兆を平均40分前に71%の精度で検知できたという。これまでは患者の不穏行動が起こってから対応していたが、AIで不穏行動を予兆検知することで、予兆段階での対応が見込め、これにより患者の入院長期化の回避、対応するスタッフの業務負荷軽減が期待できるとしている。

入院翌日の電子カルテデータから退院先を84%の精度で予測

両者は退院先の予測にもAIを活用する実証実験を行った。入院患者の入院翌日の電子カルテデータを分析し、自宅、回復期病院、慢性期病院などの退院先を予測できるか試したところ、84%の精度で退院先を予測することができたという。入院の早期の時点から退院・転院調整を行うことができれば、退院待ちの解消、患者の早期社会復帰、ベッドが空くことによる新たな患者の受け入れも期待できる。

この実証実験の結果を受けて,KNIでは2017年12月に開院する予定の北原リハビリテーション病院新棟でもAIを導入する。