デジタル病理支援ソリューションを提供するメドメイン(福岡市)は、深層学習の学習様式である「弱教師あり学習」を用い、多臓器(胃・大腸・肺・乳腺・リンパ節)の病理組織デジタル標本で腺癌を高精度に検出する人工知能(AI)の開発に成功したと発表した。同社では、この手法による人工知能開発が、ある程度汎用性の高い深層学習型人工知能の開発に適しているとしている。
転移がんを検出できるAIを開発
現在の医用画像診断の人工知能(AI)は、特定の臓器における腺癌やその亜型の分類・検出を可能にするものが主流となっている。多くの成果が上がっているのも事実だが、臨床現場の診療フローとしては、「原発巣不明だが転移したがん組織」「リンパ節転移の可能性」なども、膨大なリンパ節検体からスクリーニングする必要がある。同社は今回、こうしたケースにも対応できる、多臓器における腺がん組織を検出できるAI開発に取り組んだ。手法としては、同社が継続的に採用している「弱教師あり学習」を用いた文献例:Scientific Reports, 10: 9297, 2020)。
具体的には、国内の複数の医療機関から、胃・大腸(内視鏡生検)、肺(TBLB:経気管支肺生検)、乳腺(針生検)、リンパ節(郭清)のHE染色病理組織標本の提供を受け、教師用データには「胃、大腸、肺、乳腺」の標本のみを用い、弱教師あり学習(weakly supervised learning)のみを行うことで、病理医によって精密かつ大量にアノテーションされた教師用データを用いることなく開発を行った。リンパ節についてはアノテーションは一切行っていないという。
開発した腺癌検出を行う人工知能モデルを検証したところ、胃・大腸・肺・乳腺において精度の最大値が0.944、リンパ節においても最大0.944と高い数値が得られた。また、AIが提示するヒートマップ(腺癌を示唆する領域)は、病理医による検証の結果、妥当であることも確認された。リンパ節においては学習時に情報を一切付与していないため、本研究で開発した人工知能は、ある程度の汎用性を持って「腺がん」を検出できる可能性が強く示唆しているとしている。同社では今回開発したAIの検証を、複数の施設ならびに大規模症例でも進めるとともに、他臓器においても開発を進める予定。