メドメインが約11億円を調達 病理診断支援AIの開発を加速

病理AIソリューション「PidPort」を運営するメドメインは、複数の病院グループ、ベンチャーキャピタル、事業会社及び個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施し、約11億円の資金調達を実施したと発表した。今回調達した資金を活用し、かねてから開発を進めている深層学習を中心とした複数の疾患に対する病理診断支援のAI開発を加速させる。

薬事承認前も、複数の医療機関が出資

メドメインは九州大学医学部出身の飯塚統氏が2018年初頭に設立した医療ITベンチャーで、現在は病理標本のデジタル化およびデータストック、またその標本に対する、医師による遠隔診断支援事業を主に展開している。正式サービス開始は2020年2月だが、これまで国内外で50施設以上の医療機関と共同研究を実施、標本のデータ化および病死診断支援AIに関する基礎的な研究開発を進めている。

同社の持つAI開発の技術力は、病理診断医の慢性的な不足という事情もあいまって非常に高い評価を受けている。2020年に入り、飯塚氏を筆頭研究者とする論文が相次いで有力誌に掲載された。例えば2020年1月30日付で公開されたScientific Reportsの論文では、胃がんと結腸がんの病理診断支援に有効なAIをディープラーニングベースで開発したとし、広島大学病院および原宿病院(福岡)が所有する、それぞれ4000以上の標本を活用し検証。モデルの能力を評価する一般的な指標であるAUCにおいて、胃がんは最高0.98、結腸がんは最高0.974の成績を出している。

肺がんにおいても先日同誌に論文が掲載されており、こちらでは九州医療センターと国際医療福祉大学三田病院などから得られた合計5000弱の標本を活用し、教師データ付きの深層学習でアルゴリズムを構築。AUCにおいて最高0.988の精度を記録しているという。これらのエビデンスが評価され、今回の資金調達では福岡の国際医療福祉大学・高邦会グループ、福岡和白病院グループの2つの医療機関グループからの出資も獲得した。現在AIによる診断支援サービスは国内展開していないが、早期の薬事承認、国内事業開始のため研究を行なっており、複数の臓器・病変についてもAIの開発を進めていく方針だ。