2020年1月29日、厚生労働省は都内で中央社会保険医療協議会の総会を開催し、来年度の診療報酬改定項目、いわゆる「短冊」を内示した。オンライン診療の算定要件について全面的に見直す方針が示されている。
「オンライン医学管理料」廃止、各疾患の医学管理料に統合へ
この日総会で内示されたのは、具体的な算定点数を書き入れず「●」で示したいわゆる「短冊」と呼ばれるもので、例年この状態で方向性について了承を得たあと、算定点数を発表する流れとなっている。
まず改定の大きな柱として示されたのが「オンライン医学管理料」の廃止と、従来ある個別の医学管理料への移行だ。具体的にはオンライン医学管理料の算定要件をすべて削除し、「特定疾患療養管理料 (情報通信機器を用いた場合)として、月1回に限り●点を算定」を盛り込んだ。つまりオンライン診療の算定体系は、来年度からは「オンライン診療料+特定疾患療養管理料 (情報通信機器を用いた場合)」の二階建てに差し代わることとなる。
対象疾患指定をより柔軟にする方向へ 禁煙治療、食事指導も
次に大きな点として挙げられるのは、オンライン診療料の算定要件について、現状具体的に対象疾患を明記するかたちで要件を示している書きぶりを変更し「別に厚生労働大臣が定める患者」とする点だ。今後は診療報酬改定の時期にとらわれず、時期や内容を柔軟に見直したいという姿勢を示している。この点について、特に診療側委員がどのようなスタンスとなるのか注目される。なお、同時に現在の体系では対象とされていない「慢性頭痛」に関して、特記するかたちでオンライン診療料の対象とすることも示された。ただし「慢性頭痛のオン ライン診療に係る適切な研修」修了を必須としており、この研修についてこれまで関連する諮問会議、審議会で話題となっていないことから、臨床で算定可能となるのはまだ先と考えられる。
また、この体系に移行することに伴い、糖尿病等の治療で算定されている「外来栄養食事指導料」、禁煙治療で算定されている「ニコチン依存症管理料」にも、情報通信機器で診察をした場合の評価を新設することが示されている。
さらに、算定要件の1つとして見直しの声が多く挙がっていた、いわゆる「6ヵ月以上の対面診療」を必須とする要件について、半分の3ヵ月に改定する方針も示している。
「D to D to P」を新たに評価 「遠隔連携診療料」新設
遠隔診療の形態として、通常の医師と患者の1対1の診療のほかに、特定疾患や難病などかかりつけ医と専門医が連携するケースは「D to D to P」として関連学会でも定義されており、旭川医科大などで遠隔医療を定常的に活用する取り組みも行われている。実情を鑑み、来年度以降この診療形態について「遠隔連携診療料」として評価するもようだ。ただし内示された内容は3月に1回の算定、対象患者については「てんかん、または指定難病の疑いがあるもの」とあり、限定された対象からスタートしそうな情勢だ。
遠隔服薬指導の評価を新設、在宅患者への指導も認める
遠隔服薬指導についても、薬機法改定で認められることにともない、対応するかたちで評価を新設することが示された。月1回、服薬履歴を手帳で確認することなどが要件となっている。また在宅患者についても認める方向だが、「保険薬剤師1人につき週10回」「在宅患者訪問薬剤管理指導料と在宅患者オンライン服薬指導料を合わせて保険薬剤師1人につき週40回」の制限がかけられるもようだ。
この内示は委員の了承が得られれば、来月には具体的な点数が入り新しい診療報酬基準となる。ICTの活用について基本的には順調な適用拡大を示し、さらに今後はより柔軟な時期で対応できる体系とする方針は、各方面に大きな影響を与えそうだ。
参考資料(外部リンク):中央社会保険医療協議会総会(第448回)議事次第