厚生労働省が、世界と比べ質量ともに不足しているといわれるヘルスケアスタートアップへの新たな支援策をまとめたホワイトペーパーを公表した。25の具体的な提言が含まれており、来年度予算の概算要求へ盛り込む方針だ。
「潜在力を発揮できず、危機的な状況」
今年2月から議論を重ねてきた厚生労働省のプロジェクトチームが、野心的な展望を掲げたホワイトペーパーをまとめた。報告書の序論で、現状について「スタートアップが重要な役割を果たすヘルスケア分野において、我が国は人材や科学技術の面で大きなポテンシャルを有している。しかし、対象領域のスタートアップ数や成果を見る限り、その潜在力を十分に発揮で きているとは言い難く、更に、スタートアップ数自体も減少傾向にあると いう危機的な状況にある」と厳しい評価を行い、この現状を打破するための戦略として、4領域に対する、3つの異なるアプローチの必要性を訴えている。
具体的には、ヘルスケアスタートアップが扱う領域である「バイオ・再生」「医療機器・SaMD」「医療DX・AI」「介護テック」それぞれの現状と市場特性を鑑み、「サイエンス (アイデア)・ヒト・カネ・開発環境(規制環境、治験実施のしやすさ等)・ 市場」へのそれぞれの支援アプローチを変えることを提言。戦略として、領域ごとに「世界直行」「段階的海外展開」「国内充実」といった異なる目標を見据えるべきとしている。
冒頭に掲げた25の提言は、現在ある支援スキームの拡充も含まれているが、まったく新たな支援スキームの創設も提言されている。例えば提言2は、難病創薬や医療機器開発等の加速に向けてマイルストーン型(段階的に設定された達成目標をクリアするたびに追加で補助金を拠出する枠組み)開発支援スキームである「ヘルステック・チャレンジ(仮称)」を創設するというもの。初期フェーズにおいて多数のプロジェクトへ の分散的な支援を行い、開発早期からの段階的なサポートにより、開発リスクが高く着手が難しいテーマの開発を促進するのが目的という。国内に加え米国等での承認取得も目指せるよう、DARPA型(国防高等研究計画局による研究開発)のようなテーマに合わせたマイルストーン型を想定している。
厚生労働省では、このホワイトペーパーで提示した構想を実現するため、来年度予算案の概算要求などに盛り込む方針だ。