厚生労働省が2017年11月10日付で、国家戦略特区での遠隔服薬指導の実証事業実施に関する通知を発出していたことが分かった。2016年9月1日付で関係する法律の改正、省令が施行されたことにともなうもので、施行1年を迎え改めて事業の実施を求めたものだ。通知では、関係法令の内容を改めて通知するとともに、内容を踏まえ遺漏なく実施するよう求めている。
事業や機器の要件を改めて提示
通知では、省令として発令されている特例措置について総覧的説明を行っている。
まず事業実施が認められる条件として
1.医療資源の乏しい特定の区域に居住する利用者(患者)を対象とする場合
2.遠隔診療が行われた場合
3.特定処方箋(電子処方箋)が交付され、利用者(患者)がそれに基づく遠隔服薬指導を望んだ場合
以上のすべてが満たされることをあげている。
特区内での事業開始までの手続きについては以下となる。
1.特区内で国家戦略特別区域処方箋薬剤遠隔指導事業を定めた区域計画を策定
2.区域計画の認定(区域会議の議長は内閣総理大臣)
3.計画が認定された特区内の薬局開設者で希望する薬局を事業者として登録する
なお実施条件にある利用者が望んだ場合の見極めについては「利用者が特定処方箋を薬局に提示したとき」としている。指導を行う際の機器の要件に関しては、以下のように要件を定めている(通知内容をもとにMed IT Techで箇条書きの形に編集)。
1.スマートフォンやタブレット等も含まれる
2.鮮明な映像及び明瞭な音声及 び画像を送受信する性能を有している
3.指導等の間に送受信された映像及び音声を記録する機能を有していること
(特定の形式に限定するものではない)4.利用者側のテ レビ電話装置等に必ずしも記録機能を有することを求めない
先頭を切るのは兵庫県養父市か
この遠隔服薬指導を特区内で始めるにあたっては、上記のように各特区内で区域計画を定め、区域会議で承認を得る必要がある。現在指定されている10区域の中で、この事業に関して意欲を見せているのは兵庫県養父市だが、広報パンフレットには記載しているものの、これまで承認されている区域計画には載せられていない。今回改めての通知が出されたことで、内閣府、厚労省として推進の姿勢が示されたとも言え、他地域の特区での事業検討が始まるかも注目される。
今回の通知発出に関して、薬剤師で、東京理科大学薬学部臨床准教授の水 八寿裕氏は以下のようにコメントしている。
水 八寿裕氏(薬剤師、東京理科大学薬学部臨床准教授):
「単純に利便性を求めるライトな関係性での使用を想定しているのではなく、通院がやや困難な環境(物理的、特定の疾患、専門医の受診が必須)によって利用されるのでしょう。 現行で認めている遠隔医療では薬剤師や薬局の利用の想定がなく、別途処方箋の発行または遠隔医療実施医療機関の院内処方を要するという不具合が生じていたので、それを解消する手段や法制化の前段階としては、この方式に対する期待は大きいと考えられます。」