オンライン診療指針検討会、オンライン診療の恒久化に向け議論開始

厚生労働省は2020年11月2日、オンライン診療指針の見直しに関する検討会を開催し、政府全体の方針として示されている「オンライン診療の初診を含めての恒久化」について議論を始めた。規制改革推進会議などから求められている通り、年内に方向性を示す見通しだ。

厚労省 具体的リスクを示しつつ政府方針通りの方向性を提示

検討会で厚生労働省が示した資料より抜粋

オンライン診療をめぐっては、内閣府主導で、新型コロナ対応としてだけでなく医療のデジタル化推進の象徴的な施策として、「安全性と信頼性をベースに」恒久化の方針を年内に示すことが求められている。この日の検討会で厚生労働省は、この「安全性」と「信頼性」について論点整理を行い、今後の議論の方向を示唆した。

まず安全性については、患者が安全に診療行為を受けることと定義。多くの疾患で症状として現れる「頭痛」は初診のオンライン診療では情報が少ないこと、緊急性が想起される「胸痛」は即座の対面診療が適切なこと、初診でかつ電話による診療ではより情報が少なくなるとしてリスクが高いと示した。
信頼性については、医師と患者間の信頼性のこととし、それぞれの本人確認(資格確認)に関するリスクを提示。その上で政府方針通り「初診も含め原則解禁」「映像によるオンライン診療を原則」とすることを委員に示した。

委員からは初診のオンライン診療への「怖さ」と「期待」の声

検討会の構成員からは、初診をオンライン診療で行うことのリスクと、コロナ対応以外の理由による受診増への期待の意見が聞かれた。大橋博樹構成員(多摩ファミリークリニック院長)は、いつも診察する患者に関しては、オンライン診療を行ってもこれまでの診察内容と比較できるとして有用性を強調する一方、まったくの初診は「怖い」と表現し、リスクを実感していることを述べた。一方で、新型コロナ感染防止の観点から患者にメリットは大きいこと、診療側にとってもオンライン診療をすることで安易な長期処方をしなくて済むというメリットも挙げた。黒木春郎構成員(外房こどもクリニック院長)は、若年層や子育て世代の受診が「ぐっと増えた」と話し、こうした層ではオンライン診療が受診のハードルを下げていると指摘した。

「ベンダーによってメリットや信頼性が違う」との指摘も

また別の観点からは、金丸泰文構成員(フューチャーグループCEO)が、オンライン診療システムを提供するベンダーにより「患者さん側のメリットと金銭的負担、信頼性」も違ってくると発言。多くの会社が参入するオンライン診療システムの機能の違いを指摘し、国に対しこうした違いの是正に向けた取り組みを行うよう求めた。

検討会は年内をめどに現在の指針の見直しを含めた方向性を出す方針で、今後も複数回開かれる予定。