名古屋大研究グループ、「尿1mLの検査で脳腫瘍判定可能」 と世界で初めて実証 精度99%

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 名古屋大学の研究グループが、マイクロRNAを大量に抽出できる独自構造の装置を開発し、この装置の活用により尿中の脳腫瘍由来のマイクロRNAを高精度に検出することで、99%の精度で世界で初めて脳腫瘍を判定できたと発表した。同じ手法で他の部位のがんも検出できる可能性があるとしており、今後の研究進展が期待される。

マイクロRNAを大量に抽出できる装置を新開発

 研究成果を発表したのは、名古屋大学大学院医学系研究科脳神経外科学の夏目敦至 准教授、北野詳太郎 客員研究員、青木恒介 特任助教、同大学大学院工学研究科生命分子工学専攻の安井隆雄 准教授らの研究グループ。脳腫瘍は手足が動かない等の自覚症状が出現し、腫瘍が大きくなった状態になるまで発見されないことが少なくなく、そうした状態で治療を開始し腫瘍切除を試みても完全に取り除くことが難しいため、早期発見の手法開発が求められている。研究グループでは容易に採取できる尿を用いて、脳腫瘍を検出できる手法の開発を試みた。

 検出するバイオマーカーとして、細胞が分泌する直径40~5000nm(ナノミリ)の小胞体内に存在し、様々な生体機能を調節しているとして近年注目されているマイクロRNAを採用した。この物質は分泌する細胞により異なることが知られており、もし脳腫瘍の細胞から分泌されるマイクロRNAを高精度に検出できれば、脳腫瘍の診断に活用できる可能性が出てくることになる。

 そこで研究グループは、マイクロRNAを大量に捕捉、抽出できる新たな装置を開発した。原理はナノサイズの酸化亜鉛が、氷柱状の結晶(ナノワイヤ)を構成し約1億本密集する性質を利用したもので、わずか1mLの尿から、従来の方法に比べ大量のマイクロRNAを抽出できることを確かめた。

 次に研究グループは、尿中のマイクロ RNAの脳腫瘍バイオマーカーとしての可能性を検討するため、68 名の脳腫瘍患者と66名の健康な人の尿からマイクロ RNA を抽出。それぞれのマイクロ RNAの比較を行った。脳腫瘍患者のマイクロ RNAの組み合わせには特徴的な発現パターンがみられ、別の34名の脳腫瘍患者、34名の健康な人のマイクロRNAをパターンをもとに分類したところ、99%の正確度(感度:100%、特異度:97%)で 脳腫瘍を診断できることを世界で初めて発見した。 さらに、非常に稀な脳腫瘍に罹患している患者15人についてこの方法で判定を行ったところ、全員を「脳腫瘍あり」と正しく判定したという。

 研究グループでは今回、脳腫瘍の悪性度や大きさを問わず正確に診断することができたとしており、今後、尿中のマイクロRNAが脳腫瘍のバイオマーカーとして実用化される可能性が示されたとしている。さらに、肺がん等の他のがんも同様に尿で高精度に診断できる可能性が高く、これを確かめられれば、わずかな尿で脳腫瘍だけではなく多種類のがんを同時に発見できる可能性があるとも展望を示した。なおこの研究成果は論文として、米国化学会誌「ACS Applied Materials & Interfaces」のオンライン版に2021年4月1日付で公開された。

外部リンク(論文):Urinary MicroRNA-based Diagnostic Model for Central Nervous System Tumors Using Nanowire Scaffolds(ACS Applied Materials & Interfaces)

 

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