2018年11月22日、国立がん研究センターは、医薬品情報の問い合わせに関する多施設共有のデータベース構築運用と、AIを活用した質疑応答支援システム研究開発を開始したと発表した。木村情報技術と共同開発する。
施設間横断のQAデータベース+それをベースにしたAI構築
一般的に病院薬剤部では、施設内の医師、看護師などからの医薬品の使用方法や副作用等についての問い合わせを、医薬品情報管理室(DI:Drug Information)が対応している。この際、問い合わせごとに書籍や文献等の情報を得て返答を行ったり、Webサイトや企業に電話問い合わせをしたりするなどしている。各施設ではこうした対応のため、高頻度の質問についてはQAデータベースを構築に効率的な運用を模索しているが、薬剤に関する情報は施設固有の問題でないことが多く、施設間の連携で、より効率的な運用ができると見込まれている。
また近年は、企業のコールセンター業務にAIの導入事例が多く報告されている。木村情報技術は製薬企業のコールセンター業務をサポートするAIを開発、製品化しており、今回の共同研究は、同社の知見と技術を活用しながら、病院DI室における医療従事者からの問い合わせ対応に活用できるAIシステムを開発・運用することで、膨大なQAデータや年々増加する医薬品情報をより効率的に扱えることを目指す。
具体的には、国立がん研究センター東病院、中央病院、国立国際医療研究センター病院薬剤部による3施設共有のデータベース構築とシステム開発を行う。
2020年には実証実験へ
プロジェクトは2021年6月までの3カ年計画となっており、1年目はシステムの共同開発、2年目には開発したシステムを活用した、より多くの国立病院機構関連施設での実証試験、3年目はさらに対象施設を広げ商業化を見据えた実証実験へと拡大させる見込み。人的資源の問題等でDI室を設置できない施設もあることから、今回、国立高度専門医療研究センター※1の薬剤部が関わる情報基盤を構築することで、様々な規模の施設が活用するに足る、質の高いナレッジ提供が行えるとの考えだ。
※国立高度専門医療研究センター
国立がん研究センター、国立国際医療研究センター、国立循環器病研究センター、国立精神・神経医療研究センター、国立成育医療研究センター、国立長寿医療研究センターの総称。国民の健康に重大な影響のある特定の疾患等に係る医療に関し、調査、研究及び技術の開発並びにこれらの業務に密接に関連する医療の提供、技術者の研修等を行う。