国立国際医療研究センターは、健康診断結果から糖尿病発症のリスクを予測する「糖尿病リスク予測ツール」を教育ソフトウェアと共同開発し、Webサイトで公開した。糖尿病と診断されたことのない30歳から59歳の層を対象としており、各検査値を入力すると3年後の糖尿病発症リスクが示される。
3万人の健康診断データをベースにAIアルゴリズムを開発
日本では糖尿病が強く疑われる人が約1,000万人、可能性を否定できない人が約1,000万人と推計されている。糖尿病は、網膜症、腎症、神経障害の3大合併症に加えて、心血管疾患、がん、認知症などの様々な疾患のリスクを高めることが知られており、健康寿命を延伸するため、糖尿病の予防対策は国民的な課題とされている。
特に2型糖尿病は遺伝的素因を背景に、生活習慣などの環境要因や加齢の影響が加わることで糖代謝能が徐々に悪化し、境界型糖尿病あるいは前糖尿病といわれる状態を経て発症する。初期段階では自覚症状がないことが多く、健康診断でのスクリーニングにより発見されるのが一般的であり、このスクリーニングをより広汎に普及させることが予防対策上、非常に有益だ。
国立国際医療研究センター(NCGM)は、主に働く世代における糖尿病の予防対策を支援するため、この糖尿病リスク予測ツールを開発した。利用者の3年後の糖尿病発症のリスクを予測するもので、職域多施設研究(J-ECOHスタディ)で収集した3万人の健康診断データに基づき、機械学習手法(人工知能:AI)を導入。個人の体重、血圧、喫煙習慣などの基本項目(非侵襲的データ)のみによる予測と、さらに空腹時血糖やヘモクロビンA1cなどの血液データを追加することによる精度の高い予測の2通りから選択できる。データを入力することで、3年後の糖尿病発症リスクとともに、同性・同年代の中での相対的な比較がグラフ上に示される。
国立国際医療研究センターでは、健康診断のデータを用いた自分の糖尿病発症リスクを把握することで、より多くの人々が食事や運動といった生活習慣の改善に取り組むきっかけになることが期待されるとしている。
外部サイト:国立国際医療研究センター 糖尿病リスク予測ツール