脳画像装置で読み取った脳活動の情報を解読し、機械学習を活用して精神疾患の治療に役立てるーー。国内の研究機関が開発した基礎技術「デコーディッドニューロフィードバック」の臨床応用へ向け、これまでの実験に参加した60人以上の被験者データがWeb上に公開された。一定の手続きを取れば、研究者はリポジトリにアクセスできる。
PTSDや薬物依存の改善に期待される「デコーディッドニューロフィードバック」技術
約10年前に国際電気通信基礎技術研究所(ATR)の研究者によって開発された「デコーディッドニューロフィードバック」技術。MRIから得られる画像で「fMRI」を作成、脳活動の様子を可視化することで脳内の特定の情報(恐怖の記憶など)を解読。その情報をもとに、より好ましい反応を呼び起こすよう報酬を与えることを繰り返すことで、PTSDや不安障害、薬物依存などの精神疾患を改善しうる技術として期待されている。しかし研究チームは、この技術は非常に期待されるものの同時に効果に個人差があるという課題を認識しており、この解決のためにより多くの研究者が実際の実験データを使って脳のメカニズムを解析することが必須だと判断。今回のデータ公開となった。
データは、これまで実施された技術確立のための実験5つに参加した被験者60人以上の脳の構造画像、脳の機能画像、機械学習によるデコーダ、及び処理済みデータから構成され、ATRの機関リポジトリ、および神経科学データのオンラインリポジトリである「Synapse」に公開されている。利用希望者は両サイトを通じて申請すれば利用できる。
なおニューロフィードバック技術の関連研究として、昨年この技術の疼痛管理への応用の可能性を示した研究がATRらの研究チームから論文として発表されている。
外部リンク:ATRリポジトリ(DecNef Realtime MRI Dataset)
外部リンク:Synapse
外部リンク(論文):The DecNef collection, fMRI data from closed-loop decoded neurofeedback experiments