オンライン診療指針改定案提示、おおむね了承 コロナ禍の時限的措置終了後、実施へ
厚生労働省は29日、都内で「第19回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催し、議論してきた改定内容に従った新しい指針の文案を提示した。前回、初診におけるオンライン診療で「かかりつけの医師」以外が対応する際「診療前相談」を必要とすることを初めて示したが、この点も含め基本的には了承された。この後、パブリックコメントを経て正式に改訂されるが、指針の適用は現在運用中の時限的措置終了後となる。
『かかりつけの医師』具体的な定義は改訂時のQ&A等で提示へ
今回の会合では、厚労省側がまとめた改定案が示された(資料リンク)。前回までの議論に添い、初診からのオンライン診療は『かかりつけの医師』が行うことが望ましいが、そうでない場合でも、既往歴、服薬歴などや、その他、そのときの患者の症状から想定される必要な情報を得られるのであれば可能だと認めた。そのために、事前にオンラインかつリアルタイムで医師と患者がやりとりする「診療前相談」を行い、その中でオンライン診療が可能か医師が判断することとした。またその内容は診療録(電子カルテ)に記載するとしている。
ただ、前回会合で求められた『かかりつけの医師』の定義については「日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師」とされた程度で、まだ具体性に欠ける内容。今後指針の正式改訂時にQ&A等の付属文書で補足される見込みだ。
『診療前相談』は非医療行為 厚労省、明確に文案に盛り込む
「診療前相談」について、その結果オンライン診療ではなく対面診療が必要だと判断する場合も当然ありえるが、この場合診療前相談を行った医師(医療機関)が対面診療を行うことを基本としつつ、他院である場合は診療前相談で得た情報を必要に応じ情報提供することとした。なお今回、厚労省は診療前相談について「診療行為は含まない行為」と明確に示し、費用面について医療機関のホームページ等で十分周知することとした。前回診療側の構成員から「診療前相談は診療行為に近い」「診療行為そのもの」と発言されていたが、厚労省としては明確に否定し、費用についても診療報酬の対象ではないと示したことになる。
この点について実際に運用することを考慮すれば、現在も認められている「選定療養費」を根拠に費用を患者に求めることになると考えられるが、会合では対面診療が必要だが他院が行うべきとした場合、事実上の「紹介料」を徴収して他院に患者を紹介し対面診療を回避し続けることが可能になるのではという指摘もあった。一部ではあるが、ホームページ等でオンライン診療専門であるかのような標榜をする医療機関があるなか、診療行為としないことで、運用上の曖昧さが拡大する懸念が払拭されていないとも言える。この点についても付属文書での補足が求められるだろう。
初診後「オンライン診療のみで診療完結可能とするか」議論
また初診でオンライン診療を行ったあと診療を続けるか否かは症状に左右されるが、指針では引き続き「オンライン診療と対面診療の適切な組み合わせ」を前提にしている。この点について複数の構成員から、これまでの臨時措置の症例調査では、オンライン診療1回で完結している例も多いとし「組み合わせ」は常に求めるべきではなく、医師の裁量の範囲内とすべきという意見が出ている一方、診療側の構成員は「エビデンスが蓄積されていないなか、すべて医師の裁量とするのは危険」と反対の意見が出された。診療側委員からは、現在日本医学会連合が、オンライン診療の初診に適さない症状について提言をまとめているが(資料リンク)、今後、同様に学会で『オンライン診療で完結可能な傷病』をまとめる予定でありそれに従うべきという意見が出され、厚労省側もそれを受け、追加的にQ&A等で周知する考えを示した。
処方制限などは時限的措置とそろえる方針 取りまとめを座長に一任
このほか会合では、処方量の制限(7日分まで)や向精神薬などのハイリスクな薬の処方禁止などについて、現在コロナ禍のための臨時措置で定められているのと同様とする提案を了承。議論を踏まえての取りまとめを座長に一任し、事実上改定に向けての議論は終了した。今後は厚労省が再度取りまとめた改定案をパブリックコメントに付したあと、通知発出となる見込みだ。なお新指針が発出されても、その適用は現在運用されているコロナ禍における時限的措置が終了してからとなる。