富士通、ミリ波センサーで人の姿勢を推定する新技術開発 2023年度中の実用化目指す
富士通が、ミリ波センサーで収集した点群データから人の姿勢を高精度に推定する新技術を開発したと発表した。病院や介護施設でカメラを設置せずきめ細かな見守りを実現できるとしており、実証実験を経て2023年度中には実用化したいとしている。
ミリ波センサーの点群データをAIで解析
同社が今回開発したのは、国内電波法に準拠する79GHz帯の一般的なミリ波センサーを用い、人の詳細な行動分析を実現する新技術。一般的なミリ波センサーでは、1回あたりの電波の照射で取得できる点群データの粒度が粗いが、同社ではそれでも人の姿勢を時系列の点群データとして表現できることに着目。人の姿勢を推定するのに適した点群データを選定したうえで、そのデータを適切に拡張する技術を開発、解析に必要なデータ量を確保する手法を確立した。姿勢推定アルゴリズムの開発にあたっては、約140人の人物による、約50種の異なるシーンでの行動データを点群データと関節点の3次元座標情報が結び付けられた大規模データセットとして構築。このデータセットに基づいて高精度な姿勢推定AIモデルを開発した。
同社ではこのAIモデルに加え、さらに約100種の基本動作データを組み合わせて人の複雑な行動を分析できる「行動分析技術 Actlyzer」を連携させることで、ベッドから立ち上がった時の転倒なのか歩行時の転倒なのか、といった前後の行動を含む詳細な分析が可能となり、看護師や介護者が目視で見守りを実施する負担や緊急時の対応の遅れを減らすことができるとしている。
実用化に向けて、同社はこの技術の現場での実証実験を繰り返しており、2022年2月には鳥取市の市営住宅、6月には川崎市の実証実験フィールド(模擬ラボ)で効果検証を行なっている。8月以降も実際の高齢者施設において実証実験を予定し、検証を重ねて2023年度じゅうには実用化したいとしている。