「仮名加工医療情報」を取り扱う認定事業者制度新設 不正使用には罰則も
医療情報を厳格に保護しつつ、研究開発などに利活用するための「次世代医療基盤法」が2018年に成立・施行され、診療やコホート研究で蓄積されているデータの利活用が期待されたが、実際はこれまで20数件の事例にとどまっている。その要因として「匿名加工医療情報」の要件を満たすための条件が厳しく、加工されたデータが実際には研究開発に使いづらい実情がある。具体的には、要件を満たすために各種計測値を実測値ではなく丸める必要が生じたり、特定される恐れがあるためとして希少疾患の疾患名が記載できないなど、データそのものが精度の高い研究に資することができない可能性があるためだ。
医療分野以外でもその課題は各方面から指摘され、昨年成立した改正個人情報保護法では、利活用のための新しい加工情報の概念として「仮名加工情報」が新設された。次世代医療基盤法は個人情報保護法の医療分野における特例法であるため、対応する改正案が今国会で審議され成立したものだ。
こうした課題を解決するためとして、成立した改正法の要点は以下となる。
- 「仮名加工医療情報」を新設
他の情報と照合しない限り個人を特定できないよう加工する情報。個人情報から氏名やID等の削除は必要だが、それ以外は生データのまま提供を可能とする- 認定作成事業者制度を新設
仮名加工医療情報を作成・提供する事業者を国が認定する仕組みを新たに設ける- 認定利用事業者制度を新設
上記認定事業者から、安全管理等の基準に基づき国が認定した利活用者に限り、仮名加工医療情報を提供可能とする仕組みを設ける- 匿名加工医療情報との連結を可能とする
NDB、介護DB等の公的データベースと匿名加工医療情報の連結解析が可能となるよう、- 薬事申請に利活用可能とする
薬事承認申請のため、PMDA等に対し、利活用者からの仮名加工医療情報の提供、あるいは認定事業者からの元データ提出を可能とする- 情報漏えいや不正使用には罰則
匿名加工医療情報、仮名加工医療情報を認められた事業者以外に漏えいしたり目的外の不正使用をした場合、1年以下の拘禁または最高で100万円の罰金
もしくはその両方を科料する
今後、施行までに新設された諸制度の運用等を定める省令が制定される見込み。