大腸がんの術後補助化学療法の奏効率向上に、人工知能(AI)が寄与する可能性を示唆する研究が発表された。TNM分類と今回研究グループが開発したAIを組み合わせることで、再発リスクの予測精度を90%以上に高め、さらに再発リスクの低い遺伝子変異パターンを発見したとしている。
課題であるStageⅡ/Ⅲの予後予測精度をAIで向上
研究成果を発表したのは、東京医科大学 分子病理学分野 黒田雅彦主任教授、梅津知宏講師、消化器・小児外科学分野 永川裕一主任教授、真崎純一講師、人工知能応用医療講座 齋藤彰客員教授、人体病理学分野 長尾俊孝主任教授、山口大学大学院医学系研究科消化器・腫瘍外科学講座 永野浩昭教授、先端がん治療開発学 硲彰一教授(現周南記念病院)らの共同研究グループ。
大腸がんの治療戦略において、切除後の再発は大きな問題となっており、特に StageⅡ/Ⅲの大腸がんの予後は Stage 内でもばらつきがあることから、新たな客観的な予後の指標が必要とされ、この指標に基づく積極的な個別化医療が求められている。研究グループでは新たな人工知能の手法を用い、大腸がん根治切除の治療方針決定の選択肢となり得る新規 AI 分類の開発を目指した。
具体的には、ニューラルネットワーク(CNN)とサポートベクターマシン(SVM)を組み合わせたアルゴリズムを開発し、検証として東京医科大学病院と山口大学医学部附属病院において、2000年から2015年の間にII期からIII期の結腸癌に対して根治手術を受けた326症例のカルテをレトロスペクティブに解析した。結果、StageⅡ/Ⅲの症例に対しAIがさらに分類を細分化することで、再発予測の精度を向上することができたという。
またこの研究の中で新たに、再発リスクの低い細胞集団を次世代シーケンサーで改めて全ゲノム解析したところ、特定の変異パターンであることが確認されたという。
研究グループでは、今後は病理学的画像だけでなく、これまで個別に検討されてきている分子診断結果・放射線画像・臨床情報、さらにはゲノム情報を統合化した、より高度な判断を行える診療補助システムの開発を目指すとしている。