『デジタル田園健康特区』全国3自治体を指定、予防医療や「医療版情報銀行」を推進 内閣府
内閣府は3月9日、国家戦略特別区域諮問会議の第53回を開催し、デジタル田園健康特区(仮称)として岡山県吉備中央町、長野県茅野市、石川県加賀市を指定すると決定した。4月にも正式に閣議決定される。指定された3自治体では今後、デジタル技術の活用による地域課題解決の先駆的モデルの確立を目指し、4つの柱からなる取り組みを展開する。
3自治体内で4テーマの取り組みを展開
昨年来より話題となっていた「スーパーシティ構想」は、自治体の提案がいったんすべて却下されるなど異例の展開を見せていたが、新年度から「スーパーシティ」「デジタル田園健康特区(仮称)」と2つのスキームで展開されることとなった。この日の会議では、「スーパーシティ型国家戦略特区」として茨城県つくば市と大阪府大阪市を指定。そして新たに設置する「デジタル田園健康特区(仮称)」として、岡山県吉備中央町、長野県茅野市、石川県加賀市を指定した。
この「デジタル田園健康特区(仮称)」は、健康医療分野の地域課題に絞って規制改革を行うとともに、デジタル技術の活用による課題解決を目指すもので、指定自治体間での連携も視野に入れている。設定されたテーマは「健康医療情報の連携」「健康医療分野のタスクシフト」「移動・物流サービス」「予防医療やAI活用」「創業支援等その他の取り組み」の5つ。今回指定された自治体はこれらのテーマで取り組む事業内容をすでに提案しており、閣議決定後それぞれの自治体で事業を開始する予定だ。
吉備中央町の取り組みはPHR
今回指定された3自治体が提案している事業内容のなかで、医療ICTに関係するものは大きなもので2つある。まず岡山県吉備中央町は、周産期医療におけるデジタル技術の活用推進のため、母子健康手帳を電子化(アプリ化)。さらに独自に保健師の情報、子育て情報なども共有し、マイナポータルから得られる情報も加え、子育てに関する複合的な情報を共有・活用できるPHRの構築を目指す。事業としてはこの情報共有をベースとして妊婦の情報を的確に把握し、予防的介入を含むケアの質向上を目論む。
加賀市の取り組みは「医療版情報銀行」
石川県加賀市では、フレイル・ロコモ対策に必要なものと限定をつけたうえで、いわゆる「情報銀行」のしくみを取り入れ関係者の情報共有を推進する。具体的には、市内の特定の医療機関に対し、条例でフレイル・ロコモ対策にかかわる健康医療情報を提供するためのAPI設置を義務付ける。ガイドラインではなく条例を制定することで拘束力を高めるとともに、現在、経産省が定める情報信託に関するガイドラインでは、要配慮個人情報についてはっきりと規制が記されていないことから、関係法制を整理し全国へモデル提示を行う役割も負っている。
今後3自治体の事業展開に関しては、新たに設置される「デジタル田園健康特別区域会議(仮称)」の中で具体的な計画策定が行われる予定。