2018年7月18日、第397回中央社会保険医療協議会・総会が開催された。先の規制改革推進会議、国家戦略特区の合同区域会議で認められた特区におけるオンライン服薬指導(遠隔服薬指導)の調剤報酬について、一定の要件を付加した上で暫定的に認めることが了承された。これを受け、さっそく同日、特区である福岡市内で算定要件を満たす患者に対しオンライン服薬指導が実施された。
暫定的に「薬剤服用歴管理指導料」の算定を認める
オンライン服薬指導(中医協では遠隔服薬指導という表現が使われた)を行った場合、調剤報酬がどこまで認められるかは当初から議論があり課題となっていた。本日行われた中医協ではこの件について論点整理がなされ、以下のような対応の指針が示された。
○オンライン服薬指導でも「薬剤服用歴管理指導料」の要件を満たし得る
○実施要件であるオンライン診療の要件にあわせ、対面で服薬指導等を行った患者に対して暫定的に認める
○患者に薬剤が届けられた後も必要な確認を行うことを求める
○厚労省の「情報通信機器を用いた診療に係る指針」を参考に、情報セキュリティ対策を講じることを求める
○お薬手帳の活用を前提とすることを求める
なお「薬剤服用歴管理指導料」以外の「かかりつけ薬剤師指導料」「かかりつけ薬剤師包括管理料」に関しては、必要に応じて患家を訪問し、服用薬の整理をすることなどが求められているため、事実上オンライン服薬指導をした患者に対しては算定されないと示された。
さっそく福岡市内で運用がスタート
この日の中医協を受け、国家戦略特区である福岡市のきらり薬局名島店(運営会社:Hyuga Pharmacy株式会社)が、算定要件を満たすとみられる患者に対し初のオンライン服薬指導を行った。
この日は、特定区域に居住する患者のかかりつけ薬局であるきらり薬局の薬剤師が、インテグリティ・ヘルスケア社のオンライン診療システム「YaDoc」を介し指導を実施。その後、患者は自宅にて薬剤を受け取った。
「特例かつ暫定的」とはいえ、特区内で保険適用が認められるかたちで、オンライン診療、オンライン服薬指導の運用がスタートしたことは、今後さらなる高齢社会を迎える日本にとってひとつのマイルストーンといえる。同じ特区で特例の実施が認められている愛知県、兵庫県養父市での動向を含め、今後特区外での運用開始の参考となる事例がどれほど積み上がるか注目される。
補足
なお、本日の中医協を受け、福岡市において、初めて保険適用によるオンライン服薬指導が行われたという報道が一部なされているが、実際の患者に対する実施という意味では、愛知県で既に2018年7月5日に行われている。ただこの患者が、本日定まった特区における調剤報酬の算定要件を満たしているかは、実施したアインホールディングスによるコメントを得られなかったため不明。養父市については、実施のための法的な環境整備は行っており、引き続き事業者の選定を行うとしている。