米マウントサイナイ医科大学の研究者が、肺のCT画像鑑別などを基に診断支援するAIの可能性を示した。中国の患者279人のデータを同大が開発したAIで解析したところ、熟練した放射線医の診断と同等かあるいはそれ以上の精度を達成したとしており、PCR検査とともに有力な診断ツールになり得るとしている。
CT所見と血液検査などの評価を組み合わせ鑑別支援
同大の研究チームが開発したのは、肺のCT画像所見とともに、白血球数またはリンパ球数の異常を示す血液検査結果と、それに加え年齢、性別、および疑い症状の有無(発熱、咳、または粘液を伴う咳)の情報を組み合わせ可能性を鑑別するAI。同大の協力施設である中国の複数の病院から905人の患者データを取り寄せ、そのうち626人のデータを活用しアルゴリズムの訓練を行ったうえで、残りの279人の患者データについて、感度を評価項目に他の診断フローとの比較試験を行った。
結果、画像と臨床データで評価する放射線科医が感度75%だったのに対し、AIは84%を達成したという。理由として、このAIはCT画像において兆候を示さない初期段階の患者について、後日発症する特徴を捉えて鑑別しているとしており、放射線科医は画像に異状を認めなければ陽性とはしないため、その点において有意に差が出たとしている。事実、検証では放射線科医が陰性とした症例のうち68%について、AIが陽性としている。研究チームはこの差は早期の隔離措置を行うべき観点から非常に重要だとしている。この研究成果は、2020年5月19日付のNature Medicineに掲載された。
外部リンク:[Nature Medicine] Artificial intelligence–enabled rapid diagnosis of patients with COVID-19