顔写真の分析だけで認知機能低下を検出できる可能性 東大と都健康長寿医療センターが発表
日本の研究グループが、AI(人工知能)による顔写真の解析だけで認知機能低下を検出できたと世界で初めて発表した。今回の研究は小規模だったためさらなる研究が必要としているが、非侵襲的で時間もかからない安価なスクリーニング法としての実用化が期待される。
無表情の顔写真のみでAIが判定、感度は最高で87.31%
研究成果を発表したのは、東京大学医学部附属病院老年病科の秋下雅弘教授、亀山祐美助教(特任講師(病院))、東京都健康長寿医療センター放射線診断科の亀山征史医長らの研究グループ。認知症の治療戦略において早期診断は重要だが、これに必要なアミロイトPETや脳脊髄液採取による生検は非常に高額であったり、侵襲的でありなど実施及び普及のハードルは高い。研究グループでは以前、見た目年齢が暦年齢よりも認知機能との強い相関を示すことを突き止めており※、今回、簡単かつ非侵襲的なスクリーニング方を探求するため、AI(人工知能)により、顔の情報から認知機能低下を見つけ出せるかどうか調べた。
具体的には、東京大学医学部附属病院老年病科を受診して物忘れを訴える患者、および同大学高齢社会総合研究機構が実施している大規模高齢者コホート調査(柏スタディ※2の参加者の中から、同意を得た250人弱の「正面で表情のない顔写真」を対象に、認知機能低下を示す群(121名)と正常群(117名)の弁別ができるかどうか、複数のAIモデルで解析した。最もよい成績を示したAIモデルは、感度87.31%、特異度94.57%、正答率92.56%と高い弁別能を示した。またAIモデルが算出するスコアは、年齢よりも認知機能のスコアに有意に強い相関を示したことも分かった。さらに、AIが顔のどの部分で主に判定を行なっているか解析するため、顔写真のサンプルを上下に分けて行ったところ、上下ともに良い成績を得られたが下半分のほうがよい成績だったという。
研究グループでは、今回は人数も限られているためそのまますぐに応用ができるわけではないとしながらも、もっと多くの顔写真を集めAIに学習させることができれば、将来的にAIを用いて顔で認知機能低下をスクリーニングすることができるようになるかもしれないとしている。