移植で手の知覚神経回復
神経が損傷した場合、現在は患者自身の健康な神経を取り出して患部に移植する治療法(自家神経移植)が主流だが、採取された部分に痛みが残る場合があるなどデメリットも大きな課題となっている。京都大学医学部附属病院整形外科では、末梢神経損傷に対して人工神経を用いた治療研究を実施してきたが、これまで自家神経移植と比較して良好な結果を得られていなかった。そこで今回、バイオ3Dプリンタ(サイフューズ製)を使い、細胞のみで作製した3次元神経導管を患部に移植し、経過観察する臨床試験を行った。
具体的には3人の患者の腹部の皮膚の一部を提供してもらい、そこからもととなる細胞を培養したうえで、サイフューズの開発した臨床用バイオ3Dプリンタで3次元神経導管を作製、患者に移植し、移植後12ヶ月まで観察を行った。
結果、移植を受けた3名の患者全てにおいて知覚神経の回復が見られ、とくに副作用や問題になる合併症の発生はなく経過も良好なため、仕事復帰できたという。臨床試験の担当医は「末梢神経損傷を受傷したことによって、思うように手が使えなくなって仕事に復帰できなかったり、移植のため神経を採取されて痛みが残ってしまった患者さんが多数おられます。今回の結果から、三次元神経導管移植は将来的に末梢神経損傷の治療法の選択肢の1つになり、苦しんでおられる多くの患者さんが元どおりに社会復帰できるようになると思います」とコメントしている。