京都大学とNTTの合弁会社である「新医療リアルワールドデータ研究機構(京都市)」は、新型コロナの重症化を防ぐための研究へ、自社が開発した電子カルテ等の臨床情報抽出し構造化するシステムで支援すると発表した。研究には新型コロナ専用病棟を持つ関東の4病院が参加し、同意を得た患者の臨床情報を電子カルテなどから提供。情報は京都大学で統合され解析される。
各病院内で情報抽出と構造化、京都大学で統合、解析
今回の研究をシステムで支援するのは、昨年設立された京都大学とNTTの合弁企業「新医療リアルワールドデータ研究機構(PRiME-R)」。電子カルテを中心とした患者の臨床情報は「リアルワールドデータ(RWD)」と呼ばれ、薬剤の臨床上の効果や副作用、新薬開発の参考となるデータを含むものとして注目されているが、一般に不定型で、統合したかたちでの解析が難しいとされる。同社はNTTの独自技術をベースに、こうしたデータを情報セキュリティを保ちながら抽出し構造化できるノウハウを所持しており、複数の医療機関で治療を受ける新型コロナ患者の病態を統合的に解析し、重症化を阻止するAMED(日本医療研究開発機構)の研究に活用されることになった。
同社が支援する研究は、京都大学高等研究院 副院長・特別教授の本庶 佑氏が研究代表者を務める「COVID-19の重症化を阻止し反復パンデミックを防止する免疫制御治療薬の開発」に伴って実施される「COVID-19に対する新規診断・治療法開発を効率的に実施するための研究基盤構築」(研究代表者:武藤 学 京都大学医学部附属病院 腫瘍内科 教授)。同社は研究参加機関の埼玉医科大学総合医療センター、自治医科大学附属さいたま医療センター、横浜市立大学附属病院、沖縄徳洲会 湘南鎌倉総合病院へ同社のノウハウを元に独自開発したシステムを導入し、各病院で治療を受けた患者の情報で同意を得たものを、各病院が運用している電子カルテから抽出する。
具体的には基礎疾患等の患者背景情報、症状、治療経過を含む治療履歴等の臨床情報、体温・血圧等のバイタル情報や、PCR検査、血液系検査結果等の検査データで、各電子カルテの仕様が異なっていても構造化し、統合して解析可能なデータにできるという。各病院で構造化を終えたデータは、解析を担当する京都大学医学部附属病院へ統合され研究に活用される。同社では、開発したシステムにより複数の医療機関のデータを統合することで、大量の臨床情報を用いて解析でき、データ解析に要する期間短縮や費用削減に貢献できるとしている。