PST(神奈川県横浜市)と神奈川県立保健福祉大学(神奈川県横須賀市)は、音声データ解析技術をベースとした新型コロナウイルス感染症の「軽症」と「中等症Ⅰ」を判別する技術開発への見通しが立ったと発表した。定型文の読み上げで得られた音声データの解析で、高い判別能が得られたという。
パルスオキシメーター不足で研究決断、療養中の患者を対象に実証実験
コロナ禍のいわゆる「第5波」「第6波」では、神奈川県も含め多くの大都市圏で療養施設や医療施設に入院できず、自宅療養を選択せざるを得ない患者が多発したことは記憶に新しい。深刻だったのは、在宅で肺炎有無を判定するための酸素飽和度(SPO2)が計測できるパルスオキシメーターさえ不足したケースがあったことだ。PSTは、こうした状況でも重症化リスクを捉えるためのツールとして、同社の持つ「音声病態分析技術」の応用を着想。神奈川県立保健福祉大学の徳野慎一教授を研究代表者とし、県内の宿泊療養者及び自宅療養者(主に軽症者)の任意の参加を募って、データ(音声、症状等のアンケート)を収集、分析を行った。主要評価項目は「軽症」と「中等症 I 」の判定精度とした。
両者では解析の中間結果として、解析するための音声を「13種類の定型文」を読み上げてもらうことで収集したグループでは判別精度が90.9%、「あー」「えー」「うー」と母音を発生してもらったグループでは精度が74.2%だったと発表した。どちらも実用に十分な精度だと評価しており、特に定型文を読み上げる手法は、今後アプリ等で実用化に取り組むとしている。