医療用レーダー活用、非接触で小児のバイタルサイン検出に成功 既存機器との相関係数最高で0.96

 電気通信大学と江東豊洲病院の研究グループが、新生児集中治療室(NICU) での新生児モニタリング用に、医療用レーダーによるバイタルサイン・モニタリングシステムを開発したと発表した。従来の呼吸と心拍計測に迫る精度でありながら、 完全非接触での測定が可能だとしている。

心拍数変動、心拍数、心拍間隔の測定で既存機器と高い相関係数を達成

 システムを開発したのは、電気通信大学大学院情報理工学研究科機械知能システム学専攻の孫光鎬准教授と昭和大学 江東豊洲病院こどもセンターの阿部祥英センター長らの研究チーム。小児は生理機能が未熟であり外界からの刺激を受けやすいため、呼吸・心拍などのバイタルサインはもともと変動しやすく、また既存の接触式センサでは、体動や啼泣により測定値が変動しやすいという課題も存在している。非接触式のバイタルサイン検出システムがあれば、小児へのストレスを軽減しながら、より精確なセンシングが可能になる。こうした状況を鑑み、研究グループでは、24 GHz の非接触医療用レーダー、呼吸信号と心拍信号を分離する非線形フィルタ、心拍データを抽出するテンプレートマッチング・アルゴリズム、さらに脈動を時系列で推定する適応型ピーク検出アルゴリズムからなる検出システムを開発し、院内における小規模な初期の臨床実験を行った。

 具体的には、24 ± 5 歳の男性5人、女性4人からなる9人の健康な被験者、NICUに入院している2人の新生児を含む 3 人の低年齢小児を対象として、システムの性能評価、および既存機器との比較評価を行った。結果、従来の接触式センサと比較して、相関係数が RR(心拍数変動)、HR(心拍数)、および IBI(心拍間隔)それぞれで、 0.83、0.96、および 0.94 と高い相関を示したという。

 研究グループではこの技術を応用すれば、医療、在宅ケアやモビリティなど、様々な分野、場所での安全・健康管理のソリューションを開発できるとしている。たとえば昨今報じられている園児の置き去り防止にも応用できるとしており、今後、同大学発のベンチャー企業「Sun Lab」でプロトタイプの検討を始める。