日本語で書かれた、食事と栄養に関するオンライン情報の多くは根拠が示されず広告も含まれている——。そうした研究報告が東京大学の研究チームから発表された。オンライン情報をGoogleトレンドと検索結果から抽出し解析したもので、科学的信頼性に関して懸念を抱かせるものだとしている。
現在、食事や栄養に関連する情報は、インターネットを含めさまざまなメディアを通じて容易に入手できるが、この種の情報の信頼性は必ずしも保証されているとは言えない状況だ。そこで東京大学大学院医学系研究科の村上健太郎教授、篠崎奈々特任助教、奥原剛准教授らによる研究グループは、科学的な方法論で信頼性について検証するため、こうしたオンライン情報を網羅的かつ系統的に収集・分析した。
具体的にはまず「Google トレンド」を用い、日本語で書かれた、食事や栄養に関するオンライン情報(ブログなど)を抽出するため、それらに関連するキーワードを特定した。このプロセスでは、
1)638 のシードターム(もととなる用語)の特定
2)約 1500 組の「検索キーワード」と「関連キーワード」(注:どちらも Google トレンド上の呼び名)の特定
3)そのうち上位約 10%にあたる 160 組の「検索キーワード」と「関連キーワード」の特定
4)107の「検索に用いるキーワード」の特定
を行った。その後、Google 検索を用いて、関連するオンライン情報を抽出した。
その結果、食事や栄養に関するオンライン情報(コンテンツ)が合計 1703 個抽出され、コンテンツのなかで最も多かったテーマは「食べ物・飲み物」(22.9%)だった(図 1)。2番目以降は「体重管理」(21.5%)、「健康効果」(15.3%)、「食」(13.8%)となっていた。
これらのオンライン情報の主な発信源については(図2)、最も多かったのは「IT 企業・マスメディア」(27.8%)で、ついで「食品企業(生産・小売)」(14.5%)、「その他」(13.9%)、「医療機関」(12.6%)の順だった。
情報の特性をみてみると、編者または著者の存在を明示しているコンテンツは半数以下(46.4%、図3)。一方、半数以上(57.7%)のコンテンツにおいて 1 種類以上の広告が掲載されていた(図4)。また、引用文献があるコンテンツは40.0%にとどまった(図5)。特に体重管理をテーマとしたコンテンツは、編者や著者の存在の明示(57.9%)、広告の付随(74.6%)が多い一方で、参考文献の引用(35.0%)は少ないという結果だった。また医療機関からのコンテンツは、引用文献が少ない傾向もみられた(29.0%)。
研究チームでは、この結果は日本語で書かれたオンラインの食事・栄養関連情報におけるオーサーシップ、利益相反(広告)、科学的信頼性に関して懸念を抱かせるものであり、今後どのように扱っていくべきかを科学的に議論・検討するための基礎資料にしてほしいとしている。