2018年3月20日、三井不動産、 シスコシステムズ、Coaidoの三者は、ICT を活用した街区における救急救命の実証実験を実施した。都市部におけるものとしては日本初で、カメラ・AI やネットワークシステム・救命アプリを連携させる新しい試みは成功裡に終了。三者は今後、他の街での取り組みも視野に入れる。
「救命の連鎖」をICTの力で繋げる
この日行われた実証実験は、2017 年に三者らが、日本橋地域の安心・安全な街づくりを目的に設立した「日本橋室町エリア防災高度化実行委員会」の取り組みの一環。1月より行ってきた実証実験の成果を示すかたちで、この日公開で実験を行ったもの。
委員会、そしてこの実験の目的は、世界の救急救命に関わる関係者が必ず学ぶ「救命の連鎖」をICT活用して高度化し、救命率を上げること。「心停止の予防」「早期認識と通報」「早いCPRとAED」「救急隊、病院での措置」の4つのプロセスからなり、このどれが欠けても救命率に大きく影響するとされる。今回の実証実験では、急病人・怪我人が発見されづらかったり、施設内において救命に駆けつける管理要員同士が離れた場所にいてコミュ ニケーションを取りづらいといった課題を、カメラ・AI やネットワークシステム、救命アプリで解決して、 街全体で「救命の連鎖」を繋げ、救命率向上を目指した。
この実験の重要な部分を担うのが、シスコシステムズのクラウドサービス「Cisco Spark」と、Coaidoの「Coaido119」だ。前者はIoTをクラウドを介して情報連携するコラボレーションツールだが、今回はビル管理システムの一環として要救助者の発見と関係者への情報共有を担当。後者はアプリを通じ、現場付近の救命スキルを持つ一般の来街者へ、支援を求めるプロセスを担った(Coaidoの取り組みについては既報をご参照ください)。
実験では、まずコレド室町1のエントランスで男性が卒倒、防犯カメラ画像を通じAIが要救助者と検知することから始まった。シスコシステムズは画像解析による知見で心停止による倒れ方の特徴を把握しており、防犯カメラの映像からそれを検知できるという。それを、コラボレーションツールであるCisco Sparkを通じて建物管理者(防災センター、巡回管理要員)へ通知する。
通知を受けた防災センターは、現場最寄りにいる巡回管理要員をWi-Fiの位置情報から把握、現場急行を指示。並行して、防災センターからCoaido119を活用して一般の救命スキル保持者への支援も要請する。これらの通知、指令、要請により、現場にビルの管理要員や防災センター要員、救命スキル保持者の一般来街者が現場に行き、救命を開始。
通報を受けコレド室町1の裏口に到着した救急隊に対しては、事務所に詰めている管理要員が、Cisco Sparkを通じて把握した救命履歴や状況を救急隊に伝達しつつ現場へ誘導し、一連の流れをスムーズに遂行し終了した。
なお関係者によると、20日の実験ではCoaido119を活用し手動で支援を要請していたが、このプロセスも将来的には自動化するという。AIを活用し「自動検知して自動で助けを呼ぶ」システムを目指すとのことだ。
今後三者はこの実験をモデルケースとし、得た知見を活かして他の街での救命率を上げることにも取り組んでいく。