2017年6月に成立した改正医療法(既報)を受け、対応した施行細則の検討を行う「医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」が2018年1月24日に開催され、厚生労働省提示の省令案が了承された。事実上、6月以降に運用される表現規制の内容が決定したことになる。Med IT Techではその内容を解説する。
ウェブ上における表現は基本的にすべて規制対象
これまでインターネット上の医療における表現については、従前から医療法で定めている「医療機関名」「診療科名」「住所」「連絡先」といった事項以外は、広告の場合医療機関が掲示することはできなかった。しかし、インターネット上の情報自体、検索され自発的に閲覧されるケースが多いことから、バナー広告といった広告経由で閲覧されないページは広告規制の対象外となり、事実上ほとんど規制がかからない状態であった(薬機法、健康増進法、景品表示法、不正競争表示法の規制対象にはなっている)。
今回、改正医療法に対応するため提示された改定ガイドラインによると、広告とみなす定義を以下としている。
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性)
② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)
この両方を満たす場合は広告に該当するとしている。つまり医療機関にかかわらず個人のブログに至るまで、発信者はすべて規制の対象となる。これは「規制の対象者」の項目でも「医師若しくは歯科医師又は病院等の医療機関だけではなく、マスコミ、広告代理店、いわゆるアフィリエイター、患者又は一般人等、何人も広告規制の対象とされるものである」と明確に定義している。また補足的に「これは広告ではない」と提示しながら、医療機関名や連絡先が表示されている場合は広告とみなすと示しているが、この対象にウェブサイトも加わっており、さらにいわゆるステルスマーケティングに関しても、医療機関が費用を負担しているものならば規制対象とした。つまり、一般に医療を扱うウェブ媒体はすべてこのガイドラインの規制対象となることが明確になったと言える。
2018年6月以降、規制される表現は?
ガイドラインでは、その上で具体的に以下の表現を禁止するとした。
1.虚偽広告
2.比較優良広告
3.誇大広告
4.患者等の主観に基づく体験談
5.治療等の前又は後の写真
(※付番はMed IT Tech)
今回提示されたガイドラインで注目されるのは「患者等の主観に基づく体験談」、いわゆる口コミの規制と「治療等の前又は後の写真」、いわゆるビフォーアフター写真に関する規制。口コミに関しては、医療機関のウェブサイトに掲載されるものは内容の如何を問わず禁止とされた。第三者のウェブサイトに掲示される口コミに関しては「医療機関が広告料等の費用を負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない」とされた。
ビフォーアフターに関しては、検討会の議論の当初では治療前と治療後のセットでの表現を規制対象とする方向だったが、今回パブリックコメントでの意見も踏まえ「治療等の前又は後の写真等」と表現が付け加えられた。つまり片方のみの写真であっても掲載禁止となる。ただし、後述する「広告可能事項の限定解除」の要件をその媒体が満たし、さらに通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付与した場合は掲載が可能となる。
「広告可能事項の限定解除」要件を満たせばより広い情報提供が可能に
他方、今回のガイドラインでは「患者が自ら入手する情報」に関しては、適切な情報提供がなされる必要があるとの考え方から、以下の要件をすべて満たせば広告可能事項以外の内容も掲載できるとした。
1.自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告
2.問い合わせ先を記載すること(電話番号、メールアドレスなど)
3.自由診療にかかわる、通常必要とされる治療内容、費用等の情報を提供すること
4.自由診療にかかわる主なリスク、副作用等について情報を提供すること
1に関しては、ウェブサイトの他メルマガ、患者の求めに応じて送付するパンフレット等が該当しうるとし、幅広い媒体を認めた。ただしいわゆるインターネット上のバナー広告、検索上位を費用を払って表示させている場合などは該当しない。3と4は自由診療に関して表記する場合だが、費用に関しては標準的な費用だけでなく治療期間及び回数の表示を求め、標準的な費用が明確でない場合には、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額までの範囲を示すなど「可能な限り分かりやすく示すこと」を求めている。リスクや副作用を含め、これらの情報はリンク先で表示するなどは行わず、同じ媒体で一体的に表示することも定めた。
しかし当然ながら、限定解除の要件を満たしても、最初に挙げた5項目の規制には従わなければならない。特に虚偽広告を載せた場合「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」に処される。またそれ以外の項目を載せた場合は都道府県知事から広告中止が命令され、従わなければ「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課されることになる。
この日の会議で省令案等が了承されたことで、施行に向けた手続きはは事実上終了。2018年6月には予定通り施行され、新しい体制がスタートすることになる。