レセプトデータ解析で在宅医療患者の頻回往診を予測するリスクスコア開発 筑波大
筑波大学の研究グループが、高齢者の医療介護レセプトデータを解析し、頻回の往診が必要となる可能性が高い在宅患者を予測できるリスクスコアを開発したと発表した。在宅医療における往診はプライマリケア医にとって重要なタスクだが、オンコール対応は負担が大きい。ハイリスク患者を把握しやすくなることで、医療資源とケアの両方の最適化が期待できる。
在宅医療において在宅患者の急変などに対応する24時間のオンコール体制は必須だが、診療側にとっては大きな負担となっている。特に大きな負担となるのは短期間に繰り返し往診が必要となる頻回往診のハイリスク患者だが、全体として発熱、看取り、呼吸困難、咳による往診が多いことが先行研究で報告されているものの、ハイリスク患者に関する解析は行われていなかった。研究グループでは、茨城県つくば市と千葉県柏市における、国⺠健康保険制度及び後期高齢者医療制度の医療介護保険レセプトデータを用い、こうした患者の把握が可能かを検証した。
具体的には、つくば市では 2014 年 7 月から 2018 年 3 月、柏市では 2012 年 7 月から 2017 年 3 月の間に新たに訪問診療を開始した、要介護 1−5 の 65 歳以上の患者4888人を対象とし、訪問診療開始から 1 年後まで患者を追跡調査。平均月 1 回以上の往診を頻回往診と定義し、アウトカムとしました。年齢、性別、在宅医療における処置、要介護度、訪問診療開始時の疾患などの予測変数候補(全 19 変数)の中から、10 分割交差検証法による Least absolute shrinkage and selection operator(LASSO)ロジスティック回帰を用いて予測モデルを構築し、簡便なリスクスコアを作成した。予測モデルの識別能力の評価として Receiver operating characteristic(ROC)曲線を描き、すべての候補変数が含まれるモデルと曲線下面積(AUC)を比較した。
頻回往診の割合は13.0%(634 人/4888 人)だったが、解析の結果、在宅酸素療法(3 点)、要介護度 4―5(1 点)、悪性腫瘍(4 点)の3つが頻回往診の予測因子であることが示唆された。3 因子リスクスコアの AUC は 0.707 で、全ての候補変数を用いたモデル(AUC:0.734)と比較しても遜色がない良好な識別能を示した。
また、スコアの算出方法と各スコアにおける頻回往診の確率の推定値は図2に示した数値にまとまった。例えば「80歳男性」「要介護度 4」「在宅酸素あり」「悪性腫瘍なし」の患者のリスクスコアは 4 点で、頻回往診の確率は 20.9%と予測できることになる。
研究グループでは、今回開発したリスクスコアを用いれば、頻回往診を必要とするハイリスク患者を訪問診療開始時に特定し、人員の整った医療機関に集約させるなどの対策が可能となり、これによって適切なケアやプライマリケア医の負担軽減につながるとした。今後は実際の臨床現場でのデータ、他の市町村のデータを用いて検証していくことが望まれるとしている。