近畿大学医学部は、世界でも数例しか報告例のない胎児の先天性心疾患をエコーの遠隔診断によって出生前に発見し、発症前に根治手術することに成功したと発表した。大学では、診断困難な先天性疾患を、最新技術による胎児心臓の3次元画像表現によって遠隔診断できた意義のある症例だとしている。
エコー画像から3D画像を描出、遠隔診断と確定診断に活用
同大学小児科学教室の発表によると、今回根治できた症例は「三心房心(さんしんぼうしん)」と呼ばれる、世界的にも数例しか報告例のない先天性心疾患。肺静脈(肺から酸素を取り込んだ血液が心臓に戻る血液の通路)が、心臓(左心房)とつながる発生過程に異常が生じて発症するという。発症率は先天性心疾患の約0.1%で、左心房内の壁が肺静脈の流れを妨げるため新生児期から乳児期に高度の肺うっ血(肺に血液がうっ滞する病態)を呈することがある。
同大学病院小児科では近隣の産科医院と連携し、最新の画像処理技術を用いた胎児心臓の遠隔診断を行っている。今回、近隣の連携病院から肺静脈の異常が疑われる在胎22週の胎児の遠隔診断依頼があり、インターネットで転送された画像を解析し三心房心と診断できたという。在胎27週に同大学病院で詳細な胎児心エコー検査を行って確定診断したが、画像の詳細な解析で出生後の病態予測ができたため、在胎37週に同院で出産後6日で根治手術を行い、成功した。
担当医は今回活用された最新技術について「胎児の小さな心臓でも内部構造が詳細に描出できた。これは出生後の病状予測や手術のシミュレーションにも大いに役立つ技術である」としている。
論文リンク:Prenatal diagnosis of cor triatriatum sinister(Ultrasound in obstetrics & gynecology)