島津製作所は6月22日、血中のアミロイドペプチド(アルツハイマー型認知症の特徴であるアミロイド斑の主要成分)を測定するクラスIIの管理医療機器を発売した。血中の同物質を測定する機器は世界初で、従来の検査より被験者に負担をかけずにアルツハイマー型認知症の診断を行える可能性が広がると期待される。同社と国立長寿医療研究センターらは、この装置が臨床での診断に活用可能かを検証する前向き研究を現在行なっており、2023年までの実用化を目指している。
血中のアミロイドペプチドを測定 マーカーとしての精度はPIB-PET検査比で90%
同社が今回発売したのは「血中アミロイドペプチド測定システム Amyloid MS CL」。血中のアミロイドペプチドを測定し、アミロイドβに関連するバイオマーカー値を提示する。同社は2018年に国立長寿医療研究センターと共同でこの検査のバイオマーカーとしての性能を評価する研究成果を発表しており、それによると、現在アルツハイマー型認知症の確定診断に使われるPIB-PET検査と比べた精度(AUC)は90%となっている。また検査に必要なのは少量の血液のみのため、既存の検査方法と比べ被験者の負担を軽減することが期待されている。
同社は今後、この装置を活用し社外の企業・研究機関のコホート研究に協力することで臨床的エビデンスを取得し、アルツハイマー病の早期診断が可能な医療機器の開発を目指すとしている。なお現在、国立長寿医療研究センター、東京都健康長寿医療センター、近畿大学医学部が共同でこのバイオマーカーが臨床で活用可能か検証する前向き研究を行なっており、2023年までの実用化を目指している。
血液検査による認知症診断に関する研究としては、アミロイドβ以外にも、タウタンパク質やマイクロRNAを測定する研究を行う産学連携の多施設共同研究「BATONプロジェクト」が進行中で、このプロジェクトにはこの4者のほか国立量子科学技術研究開発機構、名古屋大学、東レが参加している。
外部リンク(論文):High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer’s disease(Nature)