119番通報を音声自動入力で即時共有 千葉市消防局が「Smart119」システムを本運用開始

Smart119(千葉県千葉市)は、同社が開発・運用を手がける救急医療支援システム「Smart119」が千葉市消防局に採用され、7月20日よりちば消防共同指令センター、同局の救急車25台に搭載されて実際の救急医療に運用されることを発表した。オペレーターが発する音声を認識し自動入力することで、システムへの入力時間をおよそ8割短縮できているという。

タブレット入力+自動入力で関係各所へ救急情報を即時共有

救急医療の現場は多くの課題を抱えているが、喫緊の課題と言われているのが、増え続ける出動件数と搬送人員への対応だ。令和元年の消防白書によると、救急自動車による現場到着所要時間は全国平均で8.7分(平成30年)、病院収容所要時間は全国平均で39.5分(平成30年)となり、救急出動件数の増加とともに救急活動時間は延伸傾向にある。心肺停止の傷病者に対する救護のケースを考えれば、AEDの普及やその活用の知見が広まっているとはいえ、まだまだ改善を求められているといえよう。

救急現場のオペレーションのさらなる改善を求め、千葉市消防局が入札の上採択したのが、現役救急医であり地元の千葉大学医学部附属病院救急科長を務める中田孝明氏がCEOの医療ベンチャー「Smart119」のシステムだ。特徴はその情報入力機能がもたらす圧倒的な効率化。専用のAndroid端末にタッチパネルやキーボードを通じての手入力だけでなく、音声認識による自動入力を可能としている。具体的には、消防指令センターのオペレーターが発する確認音声を自動認識・自動入力することを可能とした。この機能により、入力所要時間をおよそ8割短縮することに成功しているという。

AIを活用した「予測診断」アルゴリズムも研究開発中

このシステムは現在、さらなる機能強化としてAI(人工知能)を活用した予測診断アルゴリズムの開発を行っている。脳卒中や急性心筋梗塞といった重大疾患の場合、搬送先に専門病院を選ぶことが重要だが、現在開発中の機能では、搬送の過程で救急隊によって入力された症状を元に、実際の医師による診断の前にその可能性を予測する。これまで千葉市消防局の協力のもと収集したデータに基づいたアルゴリズムは、ROC曲線(Receiver Operating Characteristic Curve)のAUC(Area Under Curve)で0.881まで精度を高めてきており、本年2020年秋頃の実装を目標に開発が進められているという。

CEOの中田孝明氏は、今回の採択と運用開始にあたって「4年におよぶ開発を経てついに医療現場で活躍することとなり、大きな達成感を感じている」と述べ、今後については「『AI予測』の実用化に加え、患者の許諾の元であらかじめ常用薬や既往症の情報を預かり、いざという時に救急隊や病院に伝達する“個人用アプリ”の開発も進める」と展望を明かした。