日本感染症学会が、学会内に設置している感染症検査AI委員会名で、感染症検査の分野でのAIの開発、利活用のあり方についての見解をまとめたステートメントを発表した。同分野におけるAIは「現時点で臨床データが不⾜しており、妥当性が⼗分に評価されていない」とするものの一律的には否定せず、診療の補助という役割においては十分な機能を果たしつつあるとした。
現在は『弱いAI』と評価、高度化への課題点も指摘
今回ステートメントを発表した感染症検査AI委員会は、AIの急速な発展という現状を踏まえ、感染症検査の専門家の立場から将来的な利用について検討を行うために設置した組織。今回その活動のひとつとして感染症領域の AI に対する理解を深め、正しい活⽤を促進し、利⽤における注意点を認識することを⽬的としてステートメントを発表したという。
まず現状における同分野のAIに対する認識として「現時点で臨床データが不⾜しており、妥当性が⼗分に評価されていない」とし、あくまで⼈間が⽤いる1ツールとして位置付け、最終判断と責任は使⽤者が担うことが必要だとした。そのうえで、開発段階の課題として「教師データの質の担保」「AI 技術使⽤の必要性」などの課題を克服することが重要とした。
具体的には、教師データを作成するアノテーション作業は認定微⽣物検査技師、 1 級・2 級微⽣物検査⼠、臨床微⽣物学会認定医、臨床検査専⾨医、感染症専⾨医、あるいはそういった有資格者による指導を受けた作業者による実施が期待されると指摘。さらに、機械学習を用いていない事例として尿半定量培養における画像上のコロニー計数ソフトウェアを挙げ、場合によっては「AIで開発する必要があるか」をも冷静に検討する必要があるとした。
このように同分野のAIの現状について厳しい評価も見られ、「直ちに診療のすべてを代行するとは考えられない」という見解も示しているものの、⼀⽅で、効率的な診断や早期の異常検知など、患者ケアの向上を⽬指す中で、想像を超えて急速・確実にその⼒を伸ばしていると評価し、診療を補助する役割としては⼗分な機能を持ちつつあるとした。委員会としてはこれは結論ではなく、今後もステートメントをアップデートし、課題に対する学会の⽴場や取り組みを⽰していくことが望まれるとしている。