2020年1月14日、東北大学東北メディカル・メガバンク機構と東芝は、量子暗号通信を活用してヒトゲノム24人分のデータを安全に高速伝送することに世界で初めて成功したと発表した。現在はセキュリティの観点から物理的な移送が求められるだけに、今後のゲノム医療進展への大きな支援となる可能性がある。
新技術で距離の壁を突破、7km隔てた施設間での伝送に成功
量子暗号技術は、量子の一種である光子に暗号データ、及び解読のための鍵データを載せて伝送する技術で、光子の性質を利用し不正アクセスを高精度に検知できるのが特徴。検知した瞬間、鍵を変えて漏えいを防ぐことができ、理論上は決して情報流出が起きないとされる次世代技術だ。しかし量子暗号通信ではデータ伝送距離が延びるほど光子エネルギーの減衰が起き、伝送スピードをあげられないという課題があった。
この課題に対し、東芝はデータを一度で暗号化せずに細分化しながらその都度暗号化し伝送する技術を開発。既存の光ファイバー回線を使い、7km離れた2拠点間で、24人の全ゲノムデータと暗号鍵の通信を試みた。24人のゲノムデータを半分ずつに分け解析後伝送。それぞれ2分弱で伝送が行われ、東北大学側の施設で解読に成功したという。
量子暗号技術を搭載する伝送装置は、ほぼ絶対零度の環境を必要とする量子コンピュータとは違い常温で動作するため、比較的普及のハードルは低いとされる。東芝は今回の実験で示した医療分野のほか、金融分野での活用も視野に入れ実用化を目指す。