新型コロナウイルスの「多種の変異株の感染を阻害できる」スーパー抗体を開発、富山大学

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 富山大学の研究グループが、1つの抗体で新型コロナウイルスの多種の変異株にも対応できる中和抗体を人工的に作成することに成功したと発表した。独自に「スーパー中和抗体」と命名し、世界最速レベルで抗体を作成できると実用化に自信をみせている。

回復患者が持つ中和抗体から、遺伝子組み換えで作成

 今回の成果を発表したのは、 富山大学の医学系と遺伝子情報工学系の複数の研究者からなるグループ。同大学は抗体の作成や評価に関する14の国内外の特許を保持しており「世界最速レベルで抗体を作製し性能評価できる技術」を持っているという。それらの技術を組み合わせれば、従来2ヵ月以上かかるプロセスを1~2週間で完了できるとし、今回新型コロナウイルスの増殖を防御する中和抗体を実験的に作成する取り組みを行った。

 具体的には、まず新型コロナウイルス感染症の回復患者の血清中の中和活性を測定し、防御力の強い中和抗体を持つ患者を選定。次にその患者の血中細胞のなかから、ウイルスと強く結合する抗体を作成している細胞を選び出し、その中から抗体遺伝子を取り出して、遺伝子組換え抗体を作成した。研究グループでは、この抗体の中からさらに感染防御力に優れた抗体を特定し、最終的に多種の変異株の感染を防御する「スーパー中和抗体 28K」を取得することに成功した。この抗体に関してはすでに特許を申請済みで、以下の新型コロナウイルスの様々な株に対応できるとしている。

  • 野生株:武漢で最初に発見された SARS-CoV-2 ウイルスの原型
  • B.1.1.7(Alpha, 英国):スパイク蛋白質の RBD に N501Y 変異を有する
  • B.1.351(Beta, 南アフリカ):スパイク蛋白質の RBD に K417N/E484K/N501Y 変異を有する
  • B.1.617.1(Kappa,インド):スパイク蛋白質の RBD に L452R/E484Q 変異を有する
  • B.1.617.2(Delta, インド):スパイク蛋白質の RBD に L452R/T478K 変異を有する
  • B.1.427/429(Epsilon,カリフォルニア):スパイク蛋白質の RBD に L452R 変異を有する
 

 なお、P.1(Gamma, ブラジル)についても B.1.351(Beta, 南アフリカ)と同じ変異部位に変異を有するため同様に感染防御できると想定されるが、実験による確認はしていないという。

 研究グループでは、このスーパー抗体を軽症・中等症から急激にウイルスが増殖し重症化に移行する段階で迅速に投与すれば、重症化を強力に抑制できるとしている。また、開発したこの抗体は既存の変異部位を避け「新型コロナウイルスの感染にとって重要な部分と結合する」と推定されるため、新たな変異株に対しても防御できる可能性があり、今後現れる別の新たな変異株流行をも早期に制圧できる可能性を秘めているとした。富山大学は今後、製薬会社との共同事業化等により実用化に向けた対応を急ぎたいとしている。

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