大阪大学らの研究グループが、木材由来のセルロースナノファイバー紙を用いて脳波・心電・筋電といった生体シグナルの無線計測が可能な「電子皮膚」の開発したと発表した。ナノペーパーを多孔質化するプロセスを新たに構築することで、皮膚密着性と通気性を高めることに成功したという。
ナノペーパーに多孔質ナノ構造を付与して実現
研究成果を発表したのは、大阪大学産業科学研究所の黄茵彤氏、大阪大学の荒木徹平准教授、古賀大尚准教授らの研究グループ。生体に密着可能なセンシング回路は、疾患の早期発見や術後状態のモニタリングへの活用が期待されている。回路の素材には機械的柔軟性、皮膚適合性、皮膚密着性、通気性、滅菌処理耐性だけでなく、生分解性、持続生産性といった多くの特性が求められており、現在までそのすべての要件を満たせるものは、研究段階ではあるものの実用化したものはない。
研究グループでは、木材由来のセルロースナノファイバー紙(ナノペーパー)を用いて、人の微弱な生体シグナル(脳波、心電、筋電など)を無線計測可能な電子皮膚を開発した。ナノペーパーに多孔質ナノ構造を設計し、高い皮膚密着性(せん断保持力:2.3 N cm-2)と高い通気性(水蒸気透過性:2912 g m-2 d-1)を同時に発現させることに成功。多孔質ナノペーパー基材(厚さ:25 μm)に電極(厚さ:15 nm)を実装した(図1右上)。
研究グループでは実際にこの電子皮膚を使い、脳波、心電、筋電といった人の微弱な生体シグナルを無線測定できることを確認した(図2)。この電子皮膚は皮膚に3時間以上貼付可能で、しわ寄せを100回繰り返しても皮膚への密着を保つことができる。皮膚への刺激も見られなかったことから、長時間の生体シグナルモニタリングにも適しているとしている。剥がす際も痛みはなく、熱による滅菌処理で繰り返し使用可能だとする。研究グループでは、これまで研究してきたシート型センサシステム、ナノペーパーの半導体化などの成果を組み合わせることで、より高度な環境配慮型電子皮膚の開発が可能だとしている。