経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の施術を受けた患者の予後について、人工知能(AI)によるクラスター分析で3つの群に分けられることが分かったと日本の研究グループが発表した。心臓血管疾患の治療戦略の改善に寄与することが期待される。
機械学習で普及したアプローチによる解析に成功
研究成果を発表したのは、琉球大学大学院医学研究科 循環器・腎臓・神経内科学講座の楠瀬賢也教授と、筑波大学・名古屋市立大学・帝京大学・徳島大学らで構成する共同研究グループ。重症大動脈弁狭窄症に対しては従来の内科治療、外科治療に加え近年、低侵襲である経カテーテル大動脈弁留置術 TAVI: Transcatheter Aortic Valve Implantation が治療選択肢の一つとして確立し、実施症例も増えている。その一方で一定数の予後不良群が存在していることも明らかとなっており、予後評価に関する指標づくりも求められている。
研究チームではこの課題に対し、機械学習を用いたクラスター解析より患者予後の解析に取り組んだ。具体的には、2015年1月から2019年3月に重症大動脈弁狭窄症でTAVIを受けた1,365人の患者データ(全国17施設での多施設研究で収集)を対象に、機械学習において普及しているk-means法によるクラスタリングを行ったところ、従来の知見では明らかとならなかった3つの異なるクラスターを特定できたという。
クラスター1は高齢で大動脈弁圧較差が高く左室肥大と関連し、クラスター2は左室駆出率が保持され、大動脈弁面積が大きく血圧が高い患者群、クラスター3は頻脈、低流量/低勾配AS、左心および右心機能障害を呈する患者群だった。追跡期間中にクラスター間で有意な臨床アウトカム(医学的介入によって得られる結果)の違いが見られ、特にクラスター3は予後が悪く高リスクの患者群であることが示唆された。(別図)
研究グループはこの成果について、TAVI治療後の患者の予後をより正確に予測することで、個々の患者に最適な治療計画を立てることが可能になり、心臓病治療の質の向上に貢献する可能性があるとしている。特に高齢者や従来の手術が困難な患者にとって、こうした個別化アプローチは重要であるという。