65歳以上の日本の高齢者約76,000人を約3年間追跡し、近隣の歩道面積割合と認知症発症との関係を調べた研究で、歩道面積割合が低い地域に住む人に比べ、高い地域に住む人の認知症リスクが45%低いことが分かった。またこの違いは都会でのみみられていたことも判明し、研究グループでは「都会では、歩道が多くウォーカブルな地域に住むことが、認知症発生に予防的である可能性が示された」としている。
歩道面積割合と認知症発症の関係、追跡調査で判明
研究成果を発表したのは東京医科歯科大学 国際健康推進医学分野の谷 友香子助教らの研究グループ。研究グループでは、JAGES(Japan Gerontological Evaluation Study, 日本老年学的評価研究=代表:千葉大学予防医学センター社会予防医学研究部門 近藤克則教授)が2010年に実施した調査の参加者、65歳以上の高齢者を約3年間追跡。近隣の歩道面積割合と認知症発症との関連について分析した。歩行・入浴・排泄に介助が必要な人を除いた76,053名のデータを使用し、歩道面積割合は地理情報システムを用い、参加者の居住地の小学校区内の全道路面積に占める歩道面積割合を算出(図A)、四分位で小学校区を4群に分けた。認知症は介護保険賦課データにある「認知症高齢者の日常生活自立度」のランクⅡ以上と定義した。
解析の結果(図B)、居住地の歩道面積割合が多いほど認知症リスクが少ないことが分かり、その違いは最大で45%だった。また都市度別に解析した結果、歩道の認知症リスクの予防的な関係は、都会でのみ見られたという。研究グループでは「都市部では、近隣の歩道面積割合が高いことが認知症発症に予防的である可能性が示された。認知症にやさしい町づくりのためには、都市部では歩道の設置によるウォーカブルな都市デザインの推進が重要かもしれない」と見解を示している。