カリフォルニア大学サンディエゴ校の研究チームが、ヘモグロビンを含む深部組織の生体分子をモニターできる電子パッチを開発した。これにより、医療関係者は、悪性腫瘍、臓器機能不全、脳や腸の出血など、生命を脅かす状態を発見するのに役立つ重要な情報に、これまでにないほどアクセスできるようになるとしている。
光学センシングで高い空間分解能を実現
体内の血液循環のモニタリングは、重篤なものを含む疾患の兆候をとらえるのに非常に役立つ。循環が悪くなると臓器の機能低下が起こり、心筋梗塞や四肢の血管疾患など、さまざまな病気を引き起こす可能性が高まるし、脳や腹部、嚢胞などに異常な血液が貯留している場合は、脳出血や内臓出血、悪性腫瘍の可能性が高まる。もし血流の継続的なモニタリングが手軽にできれば、現在よりも確実に適切かつ早期の医療的介入が可能になる。
研究グループが今回開発したパッチ型のセンサーは、皮膚に快適に貼り付けることができ、非侵襲的な長期モニタリングが可能だ。柔らかいシリコーンポリマーマトリックスに、レーザーダイオードと圧電トランスデューサーのアレイを備え、レーザーダイオードはパルスレーザーを組織内に照射し、組織内の生体分子が光エネルギーを吸収、周囲の媒体に音響波を放射する。皮膚表面の生体分子のみを感知する他のウェアラブル電気化学デバイスとは異なり、皮膚下数センチの深部組織でヘモグロビンの3次元マッピングをミリメートル以下の空間分解能で行うことができる。照射する波長は拡張および変更が可能で、検出可能な分子の範囲を拡大でき、臨床応用の可能性も視野に入るという。
「体内のヘモグロビンの量と位置は、血液の流れや特定の部位への蓄積に関する重要な情報を提供する」と、カリフォルニア大学サンディエゴ校のナノ工学科教授で本研究の責任著者であるSheng Xu氏は述べており、今後、ウェアラブルデバイス化や体幹温度モニタリングの可能性についても検討する予定だという。