横国大と横市大がAI による精子判別・評価システムを開発、真陽性率は最高0.98

(プレスリリースより)

横浜国立大学工学部と横浜国立大学医学部の研究グループは、男性不妊治療において胚培養士が行うTESE(精巣内精子採取術)を、AI(人工知能)を使って支援するシステムを開発したと発表した。胚培養士の判断基準をもとに学習したAIが、精子のグレードを5段階で評価するという。

約17万個の細胞サンプルで学習

(プレスリリースより)

開発したのは、横浜国立大学工学研究院の濱上知樹教授、同研究室博士課程2年佐々木勇人さんと、横浜市立大学附属市民総合医療センターの生殖医療センター部長 湯村寧准教授、胚培養士である山本みずきさんらの研究グループ。男性不妊治療において胚培養士が行うTESE(精巣内精子採取術)には、限られた時間の中で有望な精子を見つけ出す高い細胞識別能力が要求される。この専門的な技術を有する胚培養士の負担は極めて高く、成功率を上げるための精子の探索・評価の支援技術が求められている。研究グループでは、この技術をAI(人工知能)で構築することを試みた。

具体的には、予め同意を得て収録された精子採取動画から約17万個の細胞サンプルを抽出し、深層学習とアンサンブル機械学習を併用して、精子とそれ以外の細胞を判別するAI、胚培養士が選択する特徴を数値化するAIの2つを構築した。この2つのAIを活用し判定精度を確認したところ、偽陽性率(FPR)0.3固定の状態で真陽性率(TPR)=0.97~0.98の精度を得ることに成功し、さらに6人の胚培養士の判定結果から、5段階のグレードを推定することができるようになったという。加えて、国内外の診療所における胚培養士の作業データをクラウド上で共有、継続的にAIが学習するシステムのプロトタイプを世界で初めて実現した。

この研究の成果は、基礎技術が電子情報通信学会論文誌 (2019.2)に発表された。また、受精着床学会(2019.8), 生殖医学会(2019.11)でも発表予定。