ウォーキングなどの歩行習慣の促進で、一定の生活習慣病の予防効果が見込めることはすでに知られているが、横浜市などが進めている「よこはまウォーキングポイント」事業で、予防効果だけでなく医療費削減効果も期待できることが数値で示された。横浜市では今回示された高齢者の高血圧以外の要素、つまり他の年代や疾患に対する予防効果などを考慮すれば、医療費の削減効果はさらに見込める可能性があるとしている。
60歳代の高血圧発症を12.3%抑制し、高血圧と脳卒中の医療費を削減と試算
「よこはまウォーキングポイント」事業は、横浜市とNTTドコモ、凸版印刷、オムロンヘルスケアの共同事業で、市内の希望者に歩数計またはスマートフォン向けの歩数計アプリを配布して歩数を測定してもらい、歩数にあわせ金券等への交換ができるポイントを付与するもの。2014年から開始され、これまで30万人以上が参加登録。登録者の1日平均歩数が7,000歩を越えるなど、歩行習慣の動機付けに一定の効果が認められている。
今回発表された成果は、2015~2018の全年度で横浜市国民健康保険に加入していた市民で、2015年度の特定健診受診者の中から、2015年度時点で運動機能に障害がなく、かつ生活習慣病を発症していない人(28,367人)を選定。その後事業に3年連続参加した人(1,973人)と未登録者(22,081人)等を群に分け、生活習慣病予防や医療費等に及ぼす効果を分析したもの。具体的には以下の項目の比較・分析を行った。
- 生活習慣病予防(2016~2018 年度の高血圧・糖尿病の新規発症率)
- 医療費及び、高額医療費上位1%に入る確率(2018 年度の総医療費、高血圧、糖尿病)
- メタボリックシンドローム状態の変化
分析の結果、60歳代において、3年連続参加者の中で高血圧を新規発症した割合は26.3%、未登録者の同割合は 29.99%となり、3年連続参加者の方が 3.69ポイント低くなっていたことが分かった。これを実際に高血圧を新規に発症した人数で比較すると、 3年連続参加者の発症者は未登録者の発症者より12.3%少なくなっていることになる。さらに今回の分析では、この新規発生の抑制分が医療費に及ぼす効果も推定した。高血圧が抑制されれば、それにともない脳卒中や心筋梗塞の発生も減少するため、これらの疾患も含めた医療費の抑制効果を計算したところ、少なくとも年間90,534,935円の医療費が抑制されたと推計されるという。
横浜市では今回の結果について、高血圧抑制が脳梗塞以外の脳卒中疾患、心筋梗塞等への予防効果や、他の年代でも効果が期待できる可能性を考慮すると、医療費をさらに削減できる可能性があるとしている。