「オンライン服薬指導」の推進を明確化 規制改革推進会議第3次答申

(出典)首相官邸ホームページ「総理の一日」より http://www.kantei.go.jp

2018年6月4日、第34回規制改革推進会議が首相官邸で開催され、第3次答申が取りまとめられた。答申では、今期の重要課題のひとつとして「患者が服薬指導を受ける場所の見直し」が入り、いわゆるオンライン服薬指導を推進することが明確化された。その前の週に開催された国家戦略特区区域会議の内容も含め、関連した動きをまとめる。

「一気通貫の在宅医療を実現する」

今回の答申では、今年度認められたオンライン診療の保険収載に触れながら「しかし、移動が困難な患者にとって、受診から服薬指導、薬の授受までの『一気通貫の在宅医療』が実現しなければ、オンライン診療の利便性は享受できない」と指摘。患者と家族の負担を軽減するだけでなく、医療従事者の負担を和らげ、また、地域の限られた医療資源を最大限に活かすためにも必要だとした。そのための実現項目として「患者が服薬指導を受ける場所の見直し」を設定。具体的には、患者がオンライン診療を受診した場所(職場等)で、薬剤師が服薬指導を実施することを可能とするよう、薬剤師法施行規則の見直しを検討し措置するとしている。

この記載が答申に入ったことで、事実上、早ければ来年度にも「オンライン服薬指導(遠隔服薬指導)」が認められることが決まったが、オンライン診療が認められた時のような前駆的な実証実験(既報)、そしてそれを踏まえた検証、ガイドライン等の策定といった想定されるステップはまだ緒に就いたばかりだ。先月5月30日に開催された国家戦略特区の合同区域会議で、3つの区域からすでに認められている特区内での特例措置に基づいたオンライン服薬指導の認定申請、1つの区域から特例措置の条件の緩和について提案がなされているのでご紹介したい。

愛知県、養父市、福岡市からのオンライン服薬指導の申請認める

合同区域会議では、3自治体から以下の地域でオンライン服薬指導実施の認定申請が出され、認定された。

  • 愛知県 新城市、北設楽郡設楽町・東栄町・豊根村、西尾市佐久島、知多郡南知多町日間賀島・篠島
  • 養父市 全域
  • 福岡市 特区内の交通不便地

※それぞれ具体的な区域記載なしのため、今後各方面と調整の上決定と想定される

これらの地域については、以前より制度上は運用開始されていた特区内での特例措置の認定申請であるので、この日の会議でそのまま認定された。今後この3自治体で、全国の先例となるべく実施に向けた動きが活発化する。

千葉市は「都市部におけるオンライン服薬指導」の解禁を訴え

一方、千葉市は都市部でもその効果は認められるとして、都市部におけるオンライン服薬指導を可能とする新規提案を行った。

(区域会議の千葉市資料より)
(区域会議の千葉市資料より)

区域会議で千葉市の熊谷俊人市長は、人口97万の千葉市においても、治療中断への対策、通院率の向上、重症化防止、ひいては医療費の抑制が期待できるとして解禁を要望。認定された場合の実施区域も、まずは幕張新都心エリアを念頭に置いていると具体的に示した。就業者、子育て世帯が多く今後高齢化が一気に進むと見込まれており、実証には最適だとした。なおこの区域はドローン飛行の実証実験がすでに行われている。

この提案を受けて原英史氏(国家戦略特区ワーキンググループ座長代理、政策工房代表取締役)は「現行の国家戦略特区で認められている制度は、必ずしも都市部を排除していないという認識だ。厚生労働省と協議し、実施できる区域を広げる努力を続けていきたい」とし、さらに同席していた中川雅之氏(国家戦略特区ワーキンググループ委員、日本大学経済学部教授)も「コストとベネフィットの関係でオンラインでの服薬指導が認められるべき。どういう場合にコストが高いかというのは実証実験でしか確かめられないので、千葉市のこの実験につきましては非常に期待している」と発言し、こちらについても基本的に進めていく姿勢を示した。

昨年のオンライン診療の社会実装に続き、今年度は各資料で示された「一気通貫」の合言葉のもと、オンライン遠隔指導を含めた統合的「オンライン医療」のユースケース作りが加速しそうだ。